田中貴金属工業は第5世代シグナルリレー向け次世代接点「極小クロスバー接点」を開発した。
田中貴金属工業は2025年3月12日、第5世代シグナルリレー向け次世代接点「極小クロスバー接点」を開発したと発表した。サンプル出荷は同月下旬を予定している。
同製品は、第5世代向けのテープ接点で最小サイズとなる0.2mm幅を達成している(同社調べ)。小型化が進むリレーにおいて、極小接点を使うことにより接点自体が軽量化し、接点開閉時のバウンスやチャタリングを抑制することが期待できる。バウンスは、接点の開閉時の衝撃で接点が跳ね、開閉を繰り返す現象を指し、チャタリングは、外部からの振動などで、開閉を繰り返す現象となる。
クロスバー接点は、電子機器の信号制御部品であるリレーやスイッチなどに使用される小型の接点だ。リレーは外部から電気信号を受け取り、電気回路の開閉や切り替えを行う部品で、通信機器、設備機器、家電製品など多種多様なデバイスに広く使われている。電気回路の開閉を担うリレーに組み込まれている接点は、確実に動作しないとデバイスの誤動作や故障を引き起こす可能性があり、高い信頼性が求められている。
近年は、電子機器の小型化に伴いリレーの小型化も必要とされている。リレーは小型化が進むにつれ、接点の重みにより開閉時にバウンスが発生してしまうことが課題となっていた。
しかし、こういった課題は接点自体の小型化/軽量化により解消が期待できるとされている。バウンスが抑制されることで、より精密な電気信号の制御が行え、デバイスの誤作動などの軽減に貢献可能だ。さらに、接点の小型化は省資源(省地金化)にもつながり、低コスト化も見込める。田中貴金属工業は、長年培った貴金属素材の研究開発の知見と、高い貴金属加工技術により、極小接点を開発することに成功した。
田中貴金属工業の極小クロスバー接点は、異種金属の多層接合が可能な他、全長にわたり優れた接合強度を持ったテープ形状となっている。さらに、接点サイズを小型化でき、接点形状や接点材質の選択肢が多く、各層の厚みも変更可能だ。表面の金(Au)層は、求める特性に応じて、クラッド工法あるいはスパッタ工法による取り付けから選べる。
リレーは1830年代の実用化以降、さまざまな電子機器に組み込まれるようになった。リレーの中でも、比較的小さな信号(接点開閉電流2A以下)でより大きな信号を制御する方法をシグナルリレー/信号リレーと呼ぶ。電子機器の発展に伴い、シグナルリレーおよび接点研究開発が進み、リレーと中に組み込まれる接点の小型化も進展した。
田中貴金属工業では、1970年代からシグナルリレー向け接点の開発を行っている。1998年には、第4世代シグナルリレー向け接点(テープ幅0.3mm)、2023年には第5世代シグナルリレー向け接点(テープ幅0.25mm)の開発に成功。第5世代シグナルリレーは、通信機器、半導体検査装置、医療機器、ネットワークカメラ、スマート家電、自動車など、高い信頼性が求められるさまざまな分野で活用されている。
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