エネルギー収支計算で扱うエネルギーの種類は多岐にわたります。
多くのエネルギーがある中で、加熱冷却に関係する熱エネルギーに注目した場合は熱収支とも呼ばれます。
エネルギー収支計算について、加熱した油を冷却水で冷やすための熱交換器を例に考えてみます。詳しい伝熱の計算式は次回以降で解説します。今回は比熱を用いた計算を行います。
与えられたのは供給する液の温度と流量、そして油をどこまで冷やしたいかという目標値です。ここからエネルギー収支計算(熱収支計算)により、暖められた冷却水の温度を求めます。まず高温側(油)の放出熱量を計算します。
2.0[kg/s]×2.1[kJ/(kg・K)]×(80-40)[K]=168kJ/s
油を80℃から40℃に冷やしたときに放出する熱量は168kJ/sとなります。熱収支を考えると、高温側が与える熱量と低温側が受け取る熱量は同じです。正確には熱交換器からの放熱もありますが、十分に保温されてロスがゼロであると考えます。168kJ/sの熱量が冷却水に移動するため、水の温度上昇を計算できます。冷却水出口温度をT[℃]と置きます。
168[kJ/s]=3.0[kg/s]×4.18[kJ/(kg・K)]×(T-20)[K]
T=33.4℃となり、冷却水の出口温度は33.4℃となります。
プロセスの規模や複雑さによって計算が非常に煩雑になることがあります。そのため難解な収支計算を効率的に行うために、プロセスシミュレーターと呼ばれるソフトが普及しています。このソフトではユーザーが入力したプロセスフローシートに基づいて、各プロセスの組成、温度、圧力などを瞬時に算出できます。
実験室で成功した化学反応を工業規模で再現するには、必ず収支計算を行います。物質収支とエネルギー収支は互いに密接に関連しており、化学プロセスの設計や解析において同時に考慮しなければなりません。まずは小さく分かりやすい系から考え、少しずつ複雑かつ大きな系に挑戦してみてください。
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