東武ファンフェスタの魅力(2/3 ページ)

» 2025年02月10日 10時00分 公開
[岸田法眼MONOist]

東上線所属の車両が見られることも

 東武ファンフェスタは基本的に、伊勢崎線、日光線、野田線系統の車両が集結したイベントで、東上線は2014年まで森林公園検修区で独自のイベントが開催されていた。

 というのも、東上線は伊勢崎線、日光線などとは線路がつながっていないからだ。かつては「西板線」として、伊勢崎線西新井―東上線上板橋間を結ぶ構想があったものの、関東大震災などの影響により、頓挫。先行開業した西新井―大師前間は「大師線」として現在に至る。

 幸い、伊勢崎線羽生と東上線寄居は秩父鉄道と線路がつながっており、車両の転属、検査に伴う回送は秩父鉄道所属の電気機関車に牽引される。このため、東武ファンフェスタで検査に伴う留置中の東上線所属車両を眺めることができる。

 2023年開催時は全般検査中の9000系を使い、工場棟内の車体下ろし&車体移動(後述)でモデルを務めた。2024年開催時は工場棟内の壁側に9000系、出た直後の向かい側に30000系がそれぞれ留置された。特に30000系は検査とはいえ、“古巣”に戻ってきたので、来場者の注目を集めた。

車体下ろし&車体移動

 車両基地イベントでは、おなじみのプログラム。クレーンで車両を吊り上げ、別の位置に運ぶ。来場者にとっては、車両が宙に舞う姿は斬新に映り、心が躍る。

 東武鉄道では、メディア向けに車体下ろし&車体移動を車体に近い場所から撮影できるようにしており、来場者を邪魔することなく、モデルの車両を追いかけることができる。毎年、車種は異なっており、2024年は500系リバティが務めた。以前は野岩鉄道所属の6050系も宙に舞うサプライズもあった。

一生乗れない車両に乗れる

 多くの車両基地イベントでは、家族連れなどを対象に保守用車両の乗車体験ができる。最終列車から始発列車までのあいだに補修等を行なうもので、乗客を乗せて走ることはない。また、空調設備は家庭用のエアコンを採り入れる車両もある。

 2024年開催時は軌道モーターカーの回送に乗る機会を得た。軌道モーターカー+多目的運搬車+遠隔制御車の3両1組で、多目的運搬車にはレールを載せている。「モーターカー」という名称だが、パンタグラフや大容量の蓄電池はなく、ディーゼルエンジンで動く。訓練線は約1キロあり、職員用通路(遮断機や警報機がない第4種踏切に相当)の手前で一旦停止しながらゆっくり進む。

 鉄道で肝心なのは安全に列車を運行すること。そのためには線路、枕木、バラストを常に万全な状態にしなければならない。保守用車両は、“縁の下の力持ち的”な存在なのだ。必要に応じて更新する。

 線路の交換について、最短で1年半だという。その場所は東上線の北池袋や下板橋で、急曲線が多いほか、列車の本数も多いので摩耗が激しいという。伊勢崎線浅草も急曲線が存在するものの、乗車率や本数の関係で、上記ほど摩耗が激しくないという。

 軌道モーターカーにも検査はあり、6か月に1度の割合で行なうという。そして、5年を目安にオーバーホールを行なう。基本的に車両更新についての規定はないという。

 車体色が黄色なのは「安全を意識するため」だという。ただ、すべてが黄色とは限らず、電車の色と同じ保守用車両も存在する。

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