NTTと明治大学 農学部 准教授の島田友裕氏の共同研究グループは、土壌中における微生物の生存性を決定付ける遺伝子の特定を目的に、大腸菌をモデル微生物として用いて、土壌中における長期生存性に貢献する複数の遺伝子を世界で初めて特定することに成功した。
NTTと明治大学 農学部 准教授の島田友裕氏の共同研究グループは2025年2月4日、土壌中における微生物の生存性を決定付ける遺伝子の特定を目的に、大腸菌をモデル微生物として用いて、土壌中における長期生存性に貢献する複数の遺伝子を世界で初めて特定することに成功したと発表した。
この成果は、土壌中から排出される温室効果ガスの削減や化学肥料の使用量減少につながる基盤技術の開発に貢献するとして期待される。
地球上から大気中に排出されるCO2の総排出量のうち、陸地からの排出量は60.3%を占めており、人間の活動から排出される総量の12倍となっている。そのため、陸地からのCO2排出量を削減することは地球温暖化の進行を抑制する手段となる。
また、CO2と比べて約290倍の温室効果がある亜酸化窒素(N2O)は、化学肥料の過剰な土壌への添加と土壌の微生物の活動によって生成される。加えて、植物に吸収されなかった窒素などの栄養は河川などの環境に流出し負荷となる。そのため、土壌における微生物の活動を適切にコントロールし、温室効果ガスを削減する技術が求められている。
ただ、土壌に含まれる微生物の活動をコントロールする従来の方法は、土壌の硬さ、保水性、通気性といった物理的な性質や、土壌の水素イオン指数(pH)、養分の種類/量などの化学的な性質を変化させることによって行われてきた。
しかし、これらの方法では、土壌中に多様に存在する微生物叢(微生物の集合体)全体の量を変化させることはできても、任意の微生物種ごとに量を増減させることができないという課題がある。
そのため、土壌中で微生物の生存性を決定する遺伝子を特定し、特定の微生物種の生存性をコントロールできる技術の開発が求められている。
そこでNTTと明治大学は、大腸菌をモデル微生物として利用し、土壌中の生存性をコントロールする遺伝子を特定する共同研究を開始した。
NTT宇宙環境エネルギー研究所 環境負荷ゼロ研究プロジェクト 上席特別研究員の今村壮輔氏は、「土壌中において、微生物の長期的な生存性に関わる遺伝子の情報はほとんどないため、遺伝子の解析が最も進んでおり、各遺伝子の機能に関する知見が蓄積されている大腸菌をモデル微生物に採用している」と語った。
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