オープニングキーノートパネルに出席したRapidus 取締役 会長の東哲郎氏はディスカッションの中で北海道千歳市で建設中の新工場「IIM-1(Innovative Integration for Manufacturing)」の完成予想図に触れ、「2nmあるいはそれ以降のGAA(Gate All Around)という新しい構造の半導体をここで製造していく。12月中旬にはASMLのEUV露光装置が工場に搬入される。これを皮切りに、二百数十台の装置が工場に搬入されて2025年3月末までには全てそろう。それからパイロットラインを動かし始め、作った半導体が顧客に届いてフィードバックが来る。そこからが本番となる」と話した。
東氏は現在、IBMでRapidusの150人のエンジニアがトレーニングを受けていると明かし、「彼らの3分の1が戻り、(戻ってきた分のメンバーが)またIBMに行くというローテーションをしながら進めている」と明かした。
また、AIの普及を背景として懸念されるデータセンターでの電力消費増加に関して、東氏は「どのように手を打っていくのか、その対策の1つが微細化だ。われわれがなぜ2nmの半導体を作ろうとしているのか。2nmなら(AI半導体の)電力消費が40nmに比べて20分の1に、7nmに比べても電力消費が4分の1になる。微細化が低消費電力化につながっていく。3次元化によって2.5次元より消費電力が10分の1になる」と語った。
「AI時代を切り拓く新たな半導体ビジネスモデルRUMS」というテーマで講演したRapidus 代表取締役社長の小池淳義氏は、AIがもたらす半導体の専用多品種化とスピードに対応した新たなビジネスモデルとして「RUMS(Rapid and Unified Manufacturing Service)」を紹介。「2026年、2027年ころには専用多品種、いわゆる自動車やデータセンターなどの目的に合わせたチップが要求されてくる。今のGPU、CPUは能力を全て使えていない。電力の消費などでは非常に無駄がある。チップを専用化することで消費エネルギーを4分の1にできる」と話した。
さらに、AI需要の拡大などを見据えて、「いかに早く設計して、製造するかが半導体業界での生命を決定することになる」と小池氏は述べた。
また、小池氏は新工場について「工場のクリーンルームの広さは230×230mあり、ロジック半導体のファウンドリーとしては世界一大きな工場になる。半導体搬送に関しては新しい技術を導入する。非常に特殊な搬送のシステムとなっており、前後左右、自由自在に動くことができる。従来の搬送システムはどこかでトラブルがあると止まってしまうが、新しいシステムではその問題がなくなる。AIでコントロールしながら搬送時間を圧倒的に短くでき、サイクルタイムが早くなる。前工程と後工程もIIM-1で行う。この融合によってさらにスピードを上げることができる」と話した。
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