OTセキュリティを展開するTXOne Networksは、OT向けセキュリティ市場の展望と事業戦略について説明した。
OT(制御技術)セキュリティを展開する台湾のTXOne Networksは2024年11月22日、OTセキュリティ市場の展望と事業戦略について説明した。
TXOne Networksはトレンドマイクロと台湾のMOXAが2019年に共同で設立した産業制御システム向けのセキュリティソリューションの専門企業である。現在は世界30カ国でビジネスを展開しており、2022年4月には日本法人のTXOne Networks Japanを設立。国内の製造業を中心にOTセキュリティ製品や関連サービスを展開してきた。
工場などの産業制御領域のデジタル化やネットワーク化が進む中、これらの領域へのサイバー攻撃は大幅に増えている。TXOne Networks CEOのTerence Liu(テレンス・リュウ)氏は「2021〜2024年の累計で見ると、製造業は最も多くの攻撃対象となった業種だ。従来サイバー攻撃の対象になりがちだった金融業や小売業を超えている」と急増するOT領域へのサイバー攻撃に警鐘を鳴らす。
OTセキュリティはITセキュリティとは異なり、高い可用性が求められる点が特徴となる。「CSO(Chief Security Officer)は、OTセキュリティの確保とユーザビリティの両立に取り組まなければならない。侵害ゼロ(セキュリティへの影響ゼロ)、中断ゼロ(運用への影響ゼロ)、高い生産性(ユーザーへの影響ゼロ)が目指すべき姿だ」とリュウ氏は述べている。
これらの背景があっても製造業はOTセキュリティへの取り組みの初期段階だという。米国の調査会社であるGartnerの調査によると「製造業の77%は、いまだにOTセキュリティの取り組みの初期段階にある。また、各産業でOT/ICS環境を完全に保護できている企業はない」とし、今後さらにOTセキュリティ市場は拡大し、2028年まで年率20%以上の成長を続けると予測する。
こうした動きに対し、TXOne Networksでは、OT環境に最適な一連のセキュリティ対策ツールやソリューションを提供していく方針だ。セキュリティの高度化に向けては「識別」「防御」「検知/対応/復旧」「統治」の4段階で徐々に進めていくべきだとされているが、リュウ氏は「統治(ガバナンス)まで取り組み始めている企業は非常に少なく1%未満だと考えている。こうした取り組みを進めていくためには、統合したプラットフォームが必要になる」と訴える。
TXOne Networksでは、OT環境に最適なセキュリティ検査ツールや、エンドポイント保護、ネットワーク防御などの各種ツールを提供するとともに、サイバーフィジカルシステム(CPS)保護プラットフォーム「SageOne」を用意し、資産のライフサイクル全てで保護を進めていく方針だ。「最終的にはOTセキュリティとサプライチェーンセキュリティを連携しないといけない。それにはテクノロジーだけでは不十分で、人、プロセス、テクノロジーの三位一体での取り組みが必要になる」とリュウ氏は訴えている。
こうした状況の中、TXOne NetworksではOTセキュリティへの要求が高い半導体を中心としたエレクトロニクス、自動車関連、医療関連の3つの領域への提案を重点的に強化していく。TXOne Networksでは、最適なセキュリティ提案を進めるために業界ごとの提案を強化しているが、これらの領域に特に注力するという。「TXOne Networksは台湾の大手ファウンドリーであるTSMCからサプライヤー表彰を受けたが、それはOTセキュリティベンダーとしては初めてのことだった」(リュウ氏)。
日本市場においても同様の領域を重点分野と置くが、特に国内での投資が積極的に行われ、SEMI主導でセキュリティ要件としても浸透が進む半導体業界での提案を積極的に行う。「日本では2022年4月に法人を設立し本格的に取り組みを開始したが、2023年と2024年を比較すると80%以上の成長を続けている。その大きな原動力となったのが半導体関連領域だ」とTXOne Networks Japan 代表執行役員社長の近藤禎夫氏は語る。
これらの主要顧客との関係性を強化しつつ「製造業と重要インフラのモダナイゼーションをセキュリティ面で支援しつつ、半導体や電力事業を含むAIサプライチェーンを守っていく」とリュウ氏は語っている。
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