　TXOne Networksはトレンドマイクロと台湾のMOXAが2019年に共同で設立した産業制御システム向けのセキュリティソリューションの専門企業である。2022年4月には日本法人のTXOne Networks Japanを設立しており、国内の製造業を中心にOTセキュリティ製品や関連サービスを展開してきた。TXOne Networks Japan 代表執行役員社長の近藤禎夫氏は「TXOne Networksの立ち上げから約4年、日本法人も設立から1年3カ月が経過し、さまざまな実績が積み上がってきた。グローバルでの展開も30カ国に広がり、従業員数も400人を超えた。また、Westlands Advisoryの調査において、IT／OTサイバーセキュリティプラットフォームのリーダーという評価も得られている。現在のセキュリティ業界のトレンドは、クラウドセキュリティからOTセキュリティ、サプライチェーンセキュリティに移行しつつあり、OTセキュリティの専門企業である当社としては、より産業の価値軸に寄り添ったセキュリティソリューションを提供していく方針だ。その新たなコンセプトがCPSDRだ」と語る。

製造業が重視する価値軸にセキュリティを適合

TXOne Networks Japanの今野尊之氏

　CPSDRは、デジタル技術を活用した製造業のビジネルモデルで重視されることが多いCPS（サイバーフィジカルシステム）というフレームワークに対して、ITセキュリティの製品の一つであるEDR（エンドポイントディテクション＆レスポンス）のように状態を監視しながら問題があれば即座に対応するというコンセプトになる。TXOne Networks Japan 業務執行役員マーケティング本部の今野尊之氏は「CPSとDX（デジタルトランスフォーメーション）は同じように捉えられることも多いが、CPSは資産となるデバイスや装置が中心の世界観となる。CPSDRは、このCPSに適合したセキュリティアプローチだ」と説明する。

　工場をはじめとする現場にセキュリティを導入する際に課題になるのは、CISO（最高情報セキュリティ責任者）などのセキュリティチームと、工場長など現場のオペレーションチームのアプローチに相克があることだ。セキュリティチームは、サイバー攻撃を抑制するための対策を現場に導入することを求めるが、オペレーションチームとしては運用の安定性に影響を与えかねないセキュリティ対策を入れることは好まない。

セキュリティチームとオペレーションチームの相克［クリックで拡大］出所：TXOne Networks Japan

　このセキュリティと運用の安定性のトレードオフを解決するために、事業継続や運用安定性といった製造業が重視する価値軸にセキュリティを適合させた、新たなOTセキュリティのコンセプトがCPSDRである。CPSDRのミッションは、オペレーションの安定性と可用性の維持であり、現場側の要求を基軸にしてOTセキュリティを導入することになる。「OTシステムにITセキュリティを入れるとセキュリティレベルは高いが運用の安定性は低いことが課題になっていた。一方、運用の安定性を優先してセキュリティ対策をしないとセキュリティレベルは低いままだ。CPSDRは、これらの従来のバリューラインを超えることを目的としている」（今野氏）という。