米Rockwell Automation(ロックウェル・オートメーション)の年次イベント「Automation Fair 2024」を視察した、同社の日本法人ロックウェル・オートメーション ジャパン 代表取締役社長の矢田智巳氏に今回の展示や米国製造業に対する印象について聞いた。
米Rockwell Automation(ロックウェル・オートメーション、以下ロックウェル)が年次イベント「Automation Fair 2024」(2024年11月18〜21日:現地時間、米国カルフォルニア州アナハイム)を開催。同イベントを視察した日本法人ロックウェル・オートメーション ジャパン 代表取締役社長の矢田智巳氏に、今回の展示や米国製造業に対する印象について現地で聞いた。
MONOist 今回のAutomation Fairを見てどのように感じましたか。
矢田氏 前回のAutomation Fairも含めて、米国は、実際にAI(人工知能)を生産工程に活用するフェーズに入ってきており、それをしっかりと広めていく点に軸足が置かれてると感じた。Automation Fairには製造現場の方々も来ているが、彼らも普通の設備を見るような目でAIを使ったソリューションを見ている。AIの革新性をうたうというより、こんな困りごとがあるならはAIをこう使ったらいいのではないか、という提案をするような領域になってきている。
日本より米国の方が製造現場の人手不足の問題は深刻だ。単調だったり、危険だったりする仕事は人が集まらない。人件費も上がっており、単純な仕事にはコストをかけられない。
会場でAMR(自律型搬送ロボット)のソリューションを展示していたが、ただモノを搬送するような仕事は機械にやらせればべきだ。それも導入の際に複雑なプログラミングを組む必要はなく、簡単に運用することができる点を強調している。やはりロックウェルとして、製造業の切実な課題に対して、1つ1つ対応していると感じる。
MONOist ロックウェルとしては製造業をどうやって次のステップに導こうとしているのでしょうか。
矢田氏 既に触れたAIの活用に加えて、ロックウェルがSDA(Software Defined Automation、ソフトウェア定義型自動化)と打ち出したように、制御器は制御器でプログラムを書き、場合によっては設備は設備で設定するのではなく、1つのIT環境の中に集中し、制御を完結させる方向に持っていこうとしている。
SDAには人手不足への対策という要素もある。自動車産業で電動化の流れが起こっているが、工場側の生産技術のような方たちはなかなか増員してもらえない。優秀な技術者は取り合いになっている。従来のように図面を書き、設備メーカーに作ってもらい、調整をして現場で動かし、不具合が出れば設備を修正する……そんなことをやっているともう仕組みが回らないし、人手も足りない。
ある自動車メーカーでは生産ラインの構築などにデジタルツインを活用しているが、それは標準化を推進するためでもある。ライブラリとして作っておけば、コピーも容易だ。
世界各地に工場を抱えていると、その中に買収した工場などがあれば、工場によって作り方や、品質、コストの測り方も異るケースがある。それらの標準化を進める際に、デジタルツイン上で検証してから進めれば効率的だ。
MONOist 新しい技術を取り入れる際にはどんな課題があるでしょうか
矢田氏 日本企業、特に現場の方の技術力は非常に高く、課題に対してどうすればばいいかというのは実は分かっている。現場が捉えている課題と新しい技術を結び付けて推進していく役割の方を置いているところが日本ではなかなか見つからない。
例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めると経営者が言っても、スタート地点で“デジタル技術でこの問題を解決したい”や“会社をこう変革したい”というのが明確でなければ、指示を受けたスタッフは“何から始めればいいのか”と戸惑ってしまう。
MONOist 日本における展望を教えてください
矢田氏 拡大に最も注力しているのは、クラウドのMES(生産実行システム)「Plex」だ。DXやAIに関連したソリューションに関しては、自動車やタイヤ、製薬や消費財などの分野で、初期段階としてユーザーを十分に取り込めたといえる。
そういった中で、われわれとしてユーザーが抱える課題についても理解が深まってきているので、ユーザーの課題やチャレンジに対して、われわれの技術、ソリューションを組み合わせて提案していきたい。また、米国と同様にAI関連の事業を拡大していきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.