制御システム設計ソフトにCopilotを融合、米ロックウェルは階層ごとにAI機能強化FAニュース

ロックウェル オートメーション ジャパンは「FactoryTalk Analytics GuardianAI」をはじめとする、AI(人工知能)を組み込んだソフトウェアの新機能を順次リリースする。

» 2024年07月16日 08時30分 公開
[長沢正博MONOist]

 Rockwell Automation(ロックウェル・オートメーション)の日本法人であるロックウェル オートメーション ジャパンは2024年7月10日、東京都内で「FactoryTalk Analytics GuardianAI」をはじめとする、AI(人工知能)を組み込んだソフトウェアの新機能に関する記者説明会を開催した。

 FactoryTalk Analyticsは製造現場で取得した複数のデータから分析ソリューションを提供する同社のソフトウェアだ。GuardianAIは予兆保全を行う追加機能として同月より提供する。

 GuardianAIが対応するのは、同社の可変周波数ドライブ「PowerFlex 755Tシリーズ」につながれたファン、ブロワー、モーター、ポンプの異常となっている。このドライブから得た電気信号データを活用し、工場内の各機器などが通常の動作条件下でどのように動作するかを把握。稼働中にこのドライブの信号を確認し、GuardianAIが逸脱している状況を検出すると警告を発する。

 既にAIモデルに組み込み済みの異常であれば、それを異常の原因として通知する。学習していない状態の異常を検知した場合は、それが異常なのかどうか、異常だとするとどんな種類の異常なのかもユーザー個別の情報として定義できる。

ファン、ブロワー、モーター、ポンプは組み込み済みの異常を検知[クリックで拡大]出所:ロックウェル オートメーション ジャパン
ユーザーごとの検知情報も定義可能だ[クリックで拡大]出所:ロックウェル オートメーション ジャパン
ロックウェル オートメーション ジャパンの吉田氏[クリックで拡大]

 ロックウェル オートメーション ジャパン パートナー戦略事業本部(エバンジェリスト)の吉田高志氏は「通常はどんな状態かをAIが学習しており、その範囲外の状態を検知すると、スクリーンキャプチャーのように保存して、これは通常の状態なのかどうかをユーザーに確認を促す。そこで問題のない状態としても、組み込み済みの異常の1つとしても定義できる。ユーザー側で新しく異常として定義すれば、同様の異常があった時にそのように通知してくれる」と語る。

 生成AIを組み込んだ「FactoryTalk Design Studio Copilot」のリリースも2025年早々に予定している。

 FactoryTalk Design Studioは、制御アプリケーションを開発するためのクラウドベースのソフトウェアだ。FactoryTalk Design Studio Copilotでは、自然言語でアプリケーションコンセプトを入力すると、組み込まれたCopilotがC#言語で構築されたプログラムコードを出力する。さらに、そのコードをFactoryTalk Design Studio内に展開することでアプリケーションとして動作させたり、C#からラダーコードへ変換してPLCに展開したりすることも可能だ。「C#は理解してもラダーを知らない若いワーカーも多い。その若者たちに向けた施策でもある」(吉田氏)。

FactoryTalk Design Studio Copilotは2025年早々にも提供予定[クリックで拡大]出所:ロックウェル オートメーション ジャパン

 ロックウェルでは製造現場は「自動化」から「自律化」に進むと見る。人間がプログラムしたタスクを実行するのではなく、生産システムがAIを活用して自らタスクを学び、環境に適応していく世界だ。そこではAIの活動領域を3つの階層に分けており、センシング領域のレベル1では今回のGuardianAIのほか、既にリリース済みのLogixAI、製品の状態を見える化するVisionAI、制御領域のレベル2ではTwinAI、製造管理領域のレベル3ではOptimAIといったAIをラインアップしていく計画だ。階層を明確にしてAI機能を盛り込むことで、AI同士の対話をしやすくする狙いもあるという。

階層を分けてAIの機能を提案していく[クリックで拡大]出所:ロックウェル オートメーション ジャパン

 ロックウェル オートメーション ジャパン 代表取締役社長の矢田智巳氏は、同社が900社以上の企業を調査した内容をまとめた第9回スマートマニュファクチャリング報告書について触れ、「われわれが発表した報告書によれば、機械学習/AIに既に投資または1年以内に投資した企業の割合は77%、生成AIまたはコーザルAIに既に投資または1年以内に投資した企業の割合は72%、今後1年で自社の組織が次の世代の従業員を採用する際にAIを活用するスキルがとても重要もしくは非常に重要と答えた割合は80%に上っている」と話す。

製造部門におけるAIの投資状況など[クリックで拡大]出所:ロックウェル オートメーション ジャパン

 ロックウェル・オートメーション アジア太平洋地域 社長のスコット・ウールドリッジ氏は「2年前の報告書では、トップ10の投資額にAIは入っていなかった。それが今回はAIが3番目の投資額になっている。そしてその変化は、従来の自動化から自律的な制御、運用を目指す姿勢ともとれる。これまでは同じ製品を15年間製造し続ける設備を設計すればよかったが、現在は作る製品は次々と変わっていく。その度に工場を再構築するのではなく、製品の変化の度に適合して対応する工場が求められている」と語る。

ロックウェル オートメーション ジャパンの矢田氏(左)とロックウェル・オートメーションのウールドリッジ氏(右)[クリックで拡大]

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