世界の産業界でIoT(モノのインターネット)やロボット、AI(人工知能)などを活用したスマートファクトリー化が進んでいる。その流れの中で何が起きているのか、Beckhoff Automation(日本法人) 代表取締役社長の川野俊充氏に話を聞いた。
世界の産業界でIoT(モノのインターネット)やロボット、AI(人工知能)などを活用したスマートファクトリー化が進んでいる。その流れの中で何が起きているのか、何に注視すべきなのかをいま一度整理するべく、今回はBeckhoff Automation(ベッコフオートメーション、日本法人) 代表取締役社長の川野俊充氏に話を聞いた。
MONOist 現在のスマートファクトリー化の流れでどんな点に注目していますか。
川野氏 一言で表すならAIだ。われわれや同業他社の取り組み、顧客の関心を見ても、スマートファクトリー化の流れの中で、業界全体としてAIに対する注目度はこれまであった波と比べても一段と高まっている。
先日、OpenAIが最新モデルとなるChatGPT-4o(オムニ)を発表したが、完全に人と同じように対話ができている。デモ動画でも、2台のスマートフォンを使ってChatGPT同士で会話したり、歌をつくって歌ったり、カメラで見える風景を共有したりしている。マルチモーダルで、テキストだけではなく、音声や画像、映像で入出力できる。
これまでFA業界では、クラウドで動くLLM(Large Language Models、大規模言語モデル)に対して、データはオンプレミスで置いておき、オープンソースかつオンプレミスで動く、セキュリティも担保された分野特化型のLLMですみ分けていこうというコンセンサスのようなものもあった。
それが、このChatGPT-4oのようなものが出てきてしまったら、クラウドにつなぐとかつながないとか以前に、私だったらすぐにこのAIを採用して、現場の監督作業を任せ、自分の相談相手になってほしいと思ってしまうくらいだ。
回路図を見せれば何の回路か解説し、配線に間違いがあれば指摘してくれる。それこそ人材を採用する側としては、給料や待遇面を頑張って人を採用するよりも、AIを採用するという選択肢もあるのではないかと思えるほどだ。
これまでもAIを巡っては急速な進化に対する危険性が議論されてきていて、私も理解はしているつもりだったが、最新のChatGPTを見てようやく何が危険なのかが分かった気がする。データの所有権や知的財産権、プライバシーやセキュリティなどをどうやって守るのか、議論を尽くさないといけない中で、この性能は今まで積み重ねてきた議論を台無しにしてしまいかねないほどの衝撃だ。業界としても戦略の転換を迫られていくだろう。
川野氏 AIの構造は入力と出力、さらにプロンプト(指示)という3つの要素から成り立っている。そのため、入力は2つ、出力は1つというのが基本だが、ChatGPTはこの入力の2つを混ざっていてもちゃんと分解して解釈できる。
最初に翻訳ができるようになり、次に質問に対して知識から答えられるようになり、一般常識を持つようになった。その次に何が起こったというと、入力を画像にしても分かるようになった。つまり猫の画像を“猫”と認識できるようになった。そして、テキストで説明するとそれに応じた画像を生成したり、動画を入力すると何の動画かを解釈してキャプションのように表示したりできるようになった。
産業用途では双腕ロボットの間接角度を与えると、未来予測をしてこのままではアーム同士がぶつかるなどのデータの解釈もできる。
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