物質・材料研究機構の液化水素を含む低温水素ガス環境下での材料特性評価が可能な試験設備が完成した。2025年度末までにデータの信頼性などを検証し、2026年度からの本格稼働を目指している。
物質・材料研究機構(NIMS)は2024年10月28日、液化水素を含む低温水素ガス環境下での材料特性評価が可能な試験設備が完成したと発表した。2025年度末までにデータの信頼性などを検証し、2026年度からの本格稼働を目指している。
完成した実験棟は水素防爆構造で、4つの試験設備と容量が2万4000リットル(l)の液化水素貯水槽を設けている。20〜200Kの温度域と常圧〜10MPaの圧力域で、幅広い材料について引張試験、疲労試験、破壊靭性試験などの機械的特性に関するデータを取得可能だ。さらに、中空試験片を用いることにより、20〜353Kの温度域かつ100MPa程度の高圧水素ガス環境での試験にも対応する。
水素の社会実装に向け、鍵となるのは供給コストの削減だ。そのためには、安全性を確保しつつ安価な材料を用いて水素サプライチェーンを構築する必要がある。しかし、既存の試験設備では、200K以下の低温水素環境や大気圧以上の水素ガス環境での材料特性データを得られず、液化水素インフラの構成機器に使用できる材料が限られていることがコスト削減の妨げとなっていた。
NIMSは、極低温での機械特性や水素適性といった材料特性データの取得と提供を、2026年度から開始する予定だ。得られたデータを蓄積するデータベースシステムの基盤整備にも着手している。
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