東北大学と物質・材料研究機構は、アモルファス材料における熱伝導率などの物性変化をもたらす構造的要因を解明した。構造的特徴と物性の相関性が明らかになったことで、新たな熱制御材料の開発が期待される。
東北大学と物質・材料研究機構(NIMS)は2024年1月19日、アモルファス材料における熱伝導率などの物性変化をもたらす構造的要因を解明したと発表した。
アモルファス材料は、結晶構造を持たない非晶質と呼ばれる物質で、原子や分子が不規則に密集している。アモルファス材料の作製法によって熱伝導率に違いが出るが、その構造的要因は高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)像だけでは区別がつかなかった。
研究チームは、この電子顕微鏡像をトポロジカルデータ解析(TDA)と主成分分析を用いてデータ科学により解析。その結果、低温で作製した試料には原子鎖の短いものが多く、高温で作製した試料には原子鎖が長いものが多かった。原子鎖の長いリングは熱伝導が大きくなることから、この違いがアモルファス材料の熱伝導率の差に関わっていることが示唆される。
具体的には、スパッタ成膜法により、25、100、300℃の基板温度で作製した試料の断面をTEMで観察し、TDAを用いてベクトルデータとして定量化した。主成分分析で試料間の違いを可視化したところ、300℃の基板温度で作製したGe300に大きなリング構造がより多く存在するという構造的特徴を抽出することに成功した。逆解析により、この大きなリング構造が析出温度の上昇に伴って増えることも分かった。
TEM画像を用いて抽出した構造的特徴。25℃の基板温度で作製したGe25にはゲルマニウム原子鎖の短いリング(赤点)が多く、Ge300には原子鎖の長いリング(青点)が多い[クリックで拡大] 出所:東北大学アモルファス材料における構造的特徴と物性の相関性が明らかにされたことで、新たな熱制御材料の開発が期待される。
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