物質・材料研究機構は、嗅覚センサーとMLを組み合わせ、肺がん患者の術前と術後の呼気を高精度に識別する可能性を実証した。正解率80%以上の高い精度で、肺がんの有無を予測できる可能性が示された。
物質・材料研究機構(NIMS)は2024年4月25日、嗅覚センサーとML(機械学習)を組み合わせ、肺がん患者の術前と術後の呼気を高精度に識別する可能性を実証したと発表した。簡便かつ体に負荷のかからない呼気がん診断法として、がんの早期発見と早期治療への貢献が期待される。筑波大学、茨城県立中央病院との共同研究による成果だ。
今回の研究では、2011年にNIMSが中心となって開発したMSS(Membrane-type Surface stress Sensor、膜型表面応力センサー)」を用いて、肺がん手術を受けた66人の手術前後の呼気を測定。呼気に対するMSSの応答シグナルを解析し、肺がんの有無を予測するMLモデルを構築した。
呼気測定では、同一の肺がん患者の呼気を用いて個人差を抑制したほか、再現性の高い呼気採取と測定プロトコルを使用した。また、さまざまな成分に異なる応答性を示すMSSを12チャンネル用意し、4083通りのML予測モデルを検証した。その結果、正解率80.9%、感度83.0%、特異度80.7%、陽性適合率80.6%、陰性適合率81.2%で、肺がんの有無を予測できる可能性を実証できた。
現在、肺がんのスクリーニングではCTが主に用いられているが、放射線被ばくのリスクやコスト面の課題がある。また、早期肺がんでは、偽陽性率が56〜96%と高いことが指摘されている。
研究チームは今後、各種ガス分析装置を用いた実験や、がんによって変化する代謝経路を考慮した実験などを実施。がん由来のバイオマーカーを特定することで、より科学的根拠に基づく評価方法の確立を進めるとしている。
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