NECとAGCは、建材一体型太陽光発電ガラスとガラスアンテナを組み合わせた「景観配慮型サステナブル基地局」の実証実験を行い、通信が可能なことを確認した。
NECとAGCは2024年11月11日、再生可能エネルギーの創出が可能な建材一体型太陽光発電ガラス(以下、BIPV)とガラスアンテナを組み合わせた「景観配慮型サステナブル基地局」の実証実験を行い、通信が可能なことを確認したと発表した。
景観配慮型サステナブル基地局は、BIPVやガラスアンテナ、無線機(RU)で構成される。建物の窓ガラス付近にBIPVとガラスアンテナを設置し、室内にRUを据えることで、近辺の屋外に通信エリアを形成する。これにより、周囲の景観を損なわずに新たな基地局を設置することが可能となる。同基地局は太陽光エネルギーを利用しているため、カーボンニュートラルにも貢献する。
今回の実証実験で両社は、NEC玉川事業場(神奈川県川崎市)内でNEC製の5G基地局とAGC製のBIPVおよびガラスアンテナを接続して実証を行い、以下の3点を確認した。
1点目はオフィスビルの窓に設置したBIPVにより発電された電気を用いた5G基地局の起動および継続的な稼働。2点目は5G端末を用いて通信ができることや単位時間当たりの処理能力(スループット)となる。3点目は特定エリア内の電波強度やカバレッジを示す電波伝搬ヒートマップおよびアンテナ特性だ。
これらを検証することで、同基地局の連続稼働が可能な点や通信が正常に行える点を確認した。
今回の実証実験により、5G基地局システムの約30%の電力を再生可能エネルギーによって代替できることも分かった。各社の役割に関して、NECはプロジェクトのとりまとめや実証環境とRUの提供、実証の実施を担当し、AGCはBIPVおよびガラスアンテナの提供を担った。
なお両社は、ビルの屋上などに同基地局を設置することに加えて、窓を通して屋内から屋外にむけて通信エリアを形成することで、ビルの間や下の電波が届きにくい不感地帯の解消に貢献すると想定している。
今後はペロブスカイト太陽電池などの次世代太陽電池を用いることも視野に入れながら、基地局の設置容易性を高め、再生可能エネルギーの活用に向けて取り組んでいく。
近年、モバイル通信インフラの需要増大とともに、5G/6Gにおいてスモールセル(比較的小さな通信エリア)の普及やそれに連動した多セル(複数のセルを配置すること)化が進んでいる。
しかし、増加する基地局の設置場所の確保や基地局の外観が景観に影響を与えることが、モバイルキャリア(無線通信事業者)の課題となっている。そこで、両社はBIPVと透明なガラスアンテナを組み合わせた景観配慮型サステナブル基地局の有効性をチェックするために実証を行った。
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