近年の急速なAI(人工知能)の普及には目を見張るものがあります。かつては大企業のみが利用できるものだと思っていましたが、実際には中小企業であっても利用可能であり、筆者もその活用の可能性に強い関心を持っています。
以下、AIを含め、筆者が注目している設計開発環境のトレンドについて紹介したいと思います。
設計では、繰り返し同じ作業を行うことがよくあります。最近の3D CADはAI機能によって、こうした煩雑な作業を判断し、次に行うであろう作業を予測してアシストしてくれます。わずか数クリックの作業の短縮といえますが、その積み重ねを考えると相当な時間となります。設計者はその浮いた時間(創出された時間)を、より創造的な作業に充てることができます。これこそがAIによる設計支援の本質といえます。
ここでは、ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCE Works」ポートフォリオの設計ロール「3D Creator」で利用可能なアプリケーション「xDesign」のデザイン支援機能について簡単に紹介します。
xDesignのデザイン支援機能では、まず図3に示した赤色○印内のスケッチを作成した際に表示される「スケッチのデザイン支援」を選択することで、最初のスケッチから設計者の意図をAIが推測し、同一円周ピッチと直交軸に対して、同一角度の同一円を提案してくれます。これまでだと、円周スケッチパターンを使用する必要がありましたが、一度のスケッチで必要な円をまとめて描くことが可能です。
CAEとの組み合わせによる「トポロジー最適化(位相最適化)」や「形状最適化」は、必要な剛性を維持しつつ、部品(製品)の軽量化を図る際などの設計アプローチとして活用されており、3Dプリンタの普及とともに広がりを見せています。
これに関連し、近年、AIおよびクラウドコンピューティングによって、コンピュータに形状を考えさせる「ジェネレーティブデザイン」も、これまでのモノづくりの概念にとらわれない新たな設計アプローチとして注目を集めています。ここではオートデスクの「Fusion」に搭載されているジェネレーティブデザイン機能について簡単に紹介します。
筆者が設計段階で設定したのは、図5のようなボディと拘束場所、荷重条件、材料と、デザインベースといわれる形状維持を行うジオメトリ、材料を配置しない障害ジオメトリ、デザインベースといわれる目標値(例:質量最小化、安全率)です。強度解析を行いながら、最適な形状を複数案モデル化することが可能です。
3D関連のソリューションは日々進化しています。欧米や日本製以外の新たな3D CADも登場し、その機能性を上げてきています。また、デジタルソリューションはコミュニケーションを快適に行えるツールとしても進化しています。こうした技術やソリューションの進化と向き合い、あらためて自部門にとって何が課題なのか、理想の姿とは何かを考えて、効果的な仕事のやり方を追求していくことが必要です。そうした中、まずは試してみるという勢い(チャレンジ精神)も重要だと筆者は考えます。
今回の連載を通じて筆者自身も学ぶことが多くありました。エンジニアの学びに終わりはありません――。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 (連載完)
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