これらの課題を解消したのが今回の技術だ。同技術のプロセスは、まず日清紡マイクロデバイスの技術によりインゴット/ウエハーから上層アナログICと下層アナログICを作製する。
次に、新たなCFB技術のプロセスで、上層アナログICから厚み数μmの機能層を剥離する。この剥離した機能層を上層アナログICとして分子間力接合で下層アナログICに積層し3次元アナログICを作製。機能層は薄膜のため接合後に一般的なフォトリソグラフィー装置で再配線できる。
OKI グローバルマーケティングセンター CFB開発部 部長の谷川兼一氏は「CFB技術により薄膜のアナログICをガラス基板上に積層した後、フォトリソグラフィ装置で再配線することにも成功している」と語った。
続いて、作製した3次元アナログICに対して日清紡マイクロデバイスの技術により後工程でパッケージを行う。
プロセスにおける役割について、OKIはアナログICからの剥離と接合を担当し、日清紡マイクロデバイスは半導体前工程におけるアナログICの製造と後工程のパッケージを担う
CFB技術により下層アナログICに積層した上層アナログICは薄いため、上下のアナログIC間でクロストークが発生する。クロストークとは回路あるいは伝送線からの信号が隣接する回路または伝送線に干渉しノイズを起こす現象だ。
緒方氏は「CFB技術で作製した3次元アナログICは上下のアナログICが近接するため、一方の回路が電流を受け動作すると、向き合っている回路で静電誘導が発生しクロストークが生じる。具体的には、上層ICの活性層に電子が流れると静電誘導が起き、近接する下層ICのP拡散層で+の電荷が誘起され−の電子が流れるようになる。これによりP拡散層が広がり電気抵抗が下がり設計より電気が流れクロストークが生じる」説明した。
下層のアナログICでクロストークが発生すると通常時と比べて消費電力が高くなる。上層ICの動作波形にもノイズが発生し信号処理が円滑に進まず搭載するデバイスの誤動作につながる。
解決策として、日清紡マイクロデバイスがオペアンプの高精度化で培った局所シールド技術を活用する。局所シールド技術により、上層ICと下層IC間の一部に金属の薄膜を設けることで、半導体素子と金属薄膜間の寄生容量を最小化しつつ、クロストークを防ぐ。「上層ICと下層IC間の全面にシールドを設けると、回路動作の低速化を起こす寄生容量が増加するため、局所としている」(緒方氏)。
日清紡マイクロデバイスは局所シールド技術を適用した3次元アナログICの動作実証および測定を行った結果、上下のアナログICでクロストークがなく電力の増大もない理想的な動作を確認した。
緒方氏は「CFB技術を応用し同様の薄膜ICを回転しながら積層することで、再配線や特殊な設備が必要なく4層まで3次元集積が可能なことも分かっている」と応用事例を紹介した。
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