山口大学は、山口県産業技術センターとの共同研究で、水の電気分解に使用する二極式電解槽を開発した。また、白金やルテニウムといった希少な金属を使用せず、昇温条件でも高活性な電極触媒の開発に成功した。
山口大学は2024年9月20日、山口県産業技術センターとの共同研究で、水の電気分解に使用する二極式電解槽と、昇温条件でも高活性な修飾触媒を開発したと発表した。
同電解槽は、陰極セル、陰極用集電体、PTFEセパレーター、陰極、隔膜、陽極、陽極用集電体、陽極セルで構成。PTFEセパレーター以外の全てに、ニッケルを用いている。
開発した電解槽の陰極と陽極は、電気めっきと同様の方法でニッケルスズ膜を被覆している。研究グループは電気めっきで合成する際に電流密度を増加し、電極の触媒表面に球状の析出物を形成した。
この触媒修飾した電極を用いた電解槽は、未修飾の電極を使用した電解槽と比較して、印加電流密度に対するセル電圧を抑制し(25℃、30wt%KOH)、25℃から50℃へと昇温するとさらにセル電圧が低下した。
インピーダンス解析の結果、開発した触媒修飾電極は、温度上昇により電極と溶液界面における電荷の移動に伴う抵抗が下がり、水素や酸素の発生が促進されることが判明した。
水素社会の構築に向け、水の電気分解によるグリーン水素の活用が注目されている。水素の製造コストを抑えるには、水の電気分解に使用する電極の高性能化が必要となるが、電極に広く使用される白金やルテニウムなどの貴金属は希少でコストが高いことが課題だった。また、貴金属を用いない電極の研究も進められてきたが、室温下で実施される小規模な実験がほとんどだった。
研究グループは今後、二極式電解槽の長期耐久性試験や触媒のさらなる高効率化に取り組む。
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