続いて、盆出氏は具体的なリサイクル材の材料開発、商品化について掃除機の事例を紹介した。同社では掃除機用リサイクル材料を開発するために4つの目標を掲げている。
1つ目は石油由来樹脂の使用量削減だ。この実現に向けて石油由来以外の材料を混ぜた複合材の活用を検討した。2つ目はリサイクル材の物性向上だ。再生材単体では不足する物性を高めるために補強材の採用を考えた。3つ目はリサイクル率の向上で、樹脂だけでなく補強材もリサイクル材料を使うことを検討した。4つ目は良外観だ。製品のリサイクル材の使用率向上のためには外観部品にもリサイクル材を適用する必要があった。そこで、外観部品に適用可能な良外観のリサイクル材の選定を行った。
上記の4つの目標を達成するために、リサイクルセルロース繊維複合ポリプロピレン(PP)を開発した。セルロース繊維は、間伐材などから木材を切り出し、それを木材チップとして加工して、パルプ化した後に、セルロース繊維を抽出したものだ。今回は平均粒径数十μmのものを採用した。セルロース繊維は石油由来ではないバイオマス材料の繊維上物質であり、軽量でありながら高い強度や弾性率を持つ。強度については、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度があり、線膨張率はガラスの50分の1という特徴がある。
このリサイクルセルロース繊維複合PPにより、1つ目の石油由来樹脂における使用量削減の目標に対してはバイオマス比率10%を達成し、バイオマス認証を取得している。これは家庭用電気機械器具としては業界初の取り組みだという。また、2つ目の目標についてはセルロース繊維の配合により強度を約25%向上したことを確認した。
3つ目のリサイクル材の比率向上に関しては、セルロース繊維もリサイクル材とすることでリサイクル材の比率を95%まで高めることができた。4つ目の良外観については、材料選定によりバージン材と遜色ない外観の材料を作成している。
盆出氏は「この開発で得られた材料により、環境にやさしく、良外観で高強度なリサイクル材を開発/商品化することができた」と感想を述べた。
実際にこの材料を使った商品が2024年2月に商品化された。それは紙パック式コードレススティック掃除機「MC-PB60J」で、本体ボディに今回開発した材料を採用した。本体にバイオマス材再生材を含んだ複合樹脂を使用した掃除機は業界初だという。MC-PB60Jの環境配慮設計について、操作ボタンや機能表示部分、ブランドマークを刻印化することにより、不純物の混入や印刷をはがす工程を排除することで商品自体のリサイクル性を向上している。
今後は、強度が必要のない部品や商品で汎用樹脂を展開する。また、強度が必要な商品には、バイオマス樹脂の活用を進める予定だ。併せて、再生材ではないが、樹脂の使用量を下げるために、発泡スチロールレスやテープレスの梱包にも取り組む考えだ。
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