ここで言う3つのセグメントというのが、冒頭に紹介したニアエッジ、ファーエッジ、タイニーエッジである。まずニアエッジは、エッジではないクラウドやデータセンターに最も近いエッジであり、5Gなどの移動体通信の基地局が代表になる。このニアエッジとネットワークを介してつながっているファーエッジは、多様なマシンが稼働している現場となる。ここで言う多様なマシンはオンプレミスサーバのように複数台のマシンで構成されている場合もあれば、1台のコンピュータだけの場合もある。また、場所が固定されている必要はなくクルーズ船のような移動体でもよい。「兵士が担いでいるバックパックコンピュータもファーエッジになり得る」(バジル氏)。
一方、タイニーエッジは、SUSEが提供するLinuxやコンテナを組み込めない小型のIoTデバイスから構成されている。ファーエッジと通信を介して連携することにより、現実世界のデータを収集してデジタル世界に反映する役割を担う。
SUSEはこれら3つのセグメントに向けて開発を進めているのが、統一されたコア(Unified Core)に基づくクラウドネイティブエッジプラットフォームである。この統一されたコアは、Linux OSによる制御とKubernetesによるコンテナ運用をラップアップしたもので、ニアエッジからファーエッジまでスケーラブルに適用できることを特徴としている。Linux OSとしてはSLEだけでなくより軽量のSLE Microがあり、コンテナ運用を担うRancherはエッジからサーバ、データセンターまで幅広く対応するソフトウェアになっている。
Linuxを組み込むことができないタイニーエッジには、基本的には標準化されたプロトコルによりIoTデバイスとの間で通信を行うことで対応することになる。この標準化の作業で強みを発揮するのが、SUSEがLinuxなどのオープンソースソフトウェアで培ってきたオープンに開発を進める文化である。例えばタイニーエッジとの関わりでは、ABBやシュナイダーエレクトリック、ロックウェル、シーメンスといったグローバルの産業オートメーション企業がエッジの相互運用性の仕組みを定めるために2024年4月に設立したmargoイニシアチブに参画している。この他にも、エッジのIoTデバイスをKubernetesクラスタとして公開できるようにするプロジェクトであるAkriにも加わっている。
バジル氏は「これらのオープンソースプロジェクトで議論を取り入れる形で、ファーエッジとタイニーエッジがより容易に連携を行えるプラットフォームの開発を進めている。早ければ2025年内にもリリースできるようにしたい」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.