東芝がSiCデバイスの性能を最大限に引き出す次世代ゲートドライバ技術として「フィードバック型アクティブゲートドライバー」と「低損失ゲートドライバー」の2つを開発。フィードバック型アクティブゲートドライバーは28%の損失低減と58%のサージ抑制、低損失ゲートドライバーは84%の駆動損失削減をそれぞれ試作回路で確認したという。
東芝は2026年2月17日、SiC(シリコンカーバイド)デバイスの性能を最大限に引き出す次世代ゲートドライバ技術として「フィードバック型アクティブゲートドライバー」と「低損失ゲートドライバー」の2つを開発したと発表した。フィードバック型アクティブゲートドライバーは28%の損失低減と58%のサージ抑制、低損失ゲートドライバーは84%の駆動損失削減をそれぞれ試作回路で確認したという。これら2つの次世代ゲートドライバ技術は、米国サンフランシスコで2026年2月15〜19日に開催されている半導体の国際学会「2026 IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)」で発表される予定だ。
SiCデバイスは、シリコンパワー半導体と比較して高速なスイッチングが可能なことからインバーターなどの電力変換器の効率を大幅に向上できることが期待されている。その一方で、高速スイッチングで発生するノイズによって効率が低下したり、ノイズを抑制するためにフィルターなどの部品を追加すると電力変換モジュールのサイズが大型化したりなどのトレードオフが発生することが課題になっていた。また、SiCデバイスを駆動するゲートドライバICについても、高速スイッチングや電力変換モジュールの大容量化に伴って消費電力が増加することも課題になっている。東芝が今回発表した2つの次世代ゲートドライバ技術はこれらの課題解決につながるものだ。
まず、フィードバック型アクティブゲートドライバーは、SiCデバイスの1つ目の課題である高速スイッチングに伴うノイズ発生を抑えるための技術だ。SiCデバイスなどパワー半導体のドレイン電圧には遷移速度と電圧サージの最大値に超えてはならない仕様があり、この仕様を超えるとノイズにより誤動作が起こるが、仕様より遅いとその分だけ損失が増える。つまり仕様ぎりぎりの波形でスイッチングを行うことで損失を最小限にできる。さらに、温度や負荷による電圧変動、パワー半導体の仕様のばらつきといった環境変動によって最適なスイッチング波形は変化するため、定常的に動作させると損失が発生してしまう。
フィードバック型アクティブゲートドライバーは、独自のフィードバック機能を搭載したゲートドライバ回路によって、損失を最小限にする最適な波形を生成することで電圧の急激な変化やサージを防ぐ技術である。ただし、フィードバック機能を用いた最適な波形生成やサージ電圧の削減に向けた取り組みはこれまでも幾つか発表されている。東芝自身も2019年に、遷移速度の制御によって損失を20%削減できるゲートドライバ技術の研究成果を発表している。
今回の発表は、パワー半導体を電源側に配置するハイサイドスイッチにおいて、フィードバック付きドライバ回路で最適な波形を生成を行った点で新規性がある。東芝の従来の研究成果は、パワー半導体をグラウンド(GND)側に配置するローサイドスイッチが対象になっていた。
フィードバック付きドライバ回路に入力する電圧は検出回路を用いて検出するが、検出回路にはGNDとの間に寄生容量が存在している。ゲートドライバICの基準電圧はパワー半導体のソース側の電圧になるが、ローサイドスイッチの場合、ゲートドライバICの基準電圧と寄生容量の基準電圧は同じGND電圧であり寄生容量による誤差が少ないので検出回路による誤差も小さくて済む。
一方、ハイサイドスイッチでは、ゲートドライバICの基準電圧はパワー半導体のスイッチングノードがゲートドライバICの基準電圧になる一方で、検出回路とつながる寄生容量の基準電圧はGND電圧となる。このように基準電圧が異なるため検出回路に誤差が発生してしまうことから、ハイサイドスイッチにおけるフィードバック付きドライバ回路の研究開発はローサイドスイッチと比べてハードルが高い状態にあった。
今回の研究成果では、この誤差を補正する補正回路を追加することでハイサイドスイッチでもフィードバック付きドライバ回路を利用できるようにした。補正回路は、検出回路に入力される現在の電圧と寄生容量がない場合の電圧を比較し、減衰率調整回路の減衰率を調整する仕組みを組み込んでいる。これによってIC基準電圧の正しい電圧を検出できるようになり、最適な波形を生成するためのフィードバックを行えるようになった。
これらの機能を組み込んだゲートドライバICを試作し、SiCデバイスと組み合わせて評価したところ、電圧の遷移速度を一定に保てることを確認した。フィードバックを行わない場合と比較して、スイッチング損失を28%削減できたという。さらに、もう1つの損失の原因であるサージ電圧も、フィードバックを行わない場合と比較して58%低減できたとしている。
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