月面を照らす「光の物差し」 JAXAとカシオが可視光測位技術を実証宇宙開発(1/2 ページ)

カシオ計算機とJAXAは、GNSS未整備の月面で活用可能な測位システム「picalico」の実証実験を行った。新たに白色の一般照明を測位に併用する新手法を公開。2030年代の月面基地建設への貢献を目指す。

» 2026年02月12日 06時30分 公開
[安藤照乃MONOist]

 カシオ計算機と宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は2026年2月4日、神奈川県相模原市のJAXA相模原キャンパスにおいて、カメラ可視光通信技術を用いた測位システム「picalico(ピカリコ)」による測位実験の様子を公開した。両者は2021年より、GNSS(全球測位衛星システム)などの測位インフラが未整備な月面環境を想定し、カメラと光源を活用した測位手法の確立に向け共同研究を推進している。

動画カメラ可視光通信技術を用いた測位システム「picalico(ピカリコ)」による実証[クリックで再生]

可視光通信活用の位置測位システム「ピカリコ」とは

 可視光通信技術とは、LED灯から照射される赤(Red)/緑(Green)/青(Blue)の発光色を高速に変化させることでデジタル信号を生成し、それをカメラで捉えることで情報を伝送する通信方式である。信号は、3色に光るLED(以下、RGB LED)を24回または12回切り替える色変化のパターンで構成され、そのパターンが1つのID情報となる。色変化のパターンは106万2882通りあり、受信側となるカメラでは1台で最大100個の信号を同時に受信することが可能である。

測位システムpicalico(ピカリコ) 測位システムpicalico(ピカリコ)[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

 カシオ計算機はこの通信技術を位置測位に応用し、2019年より位置測位システムpicalico(ピカリコ)として提供を開始した。倉庫や製造工場などでは、移動体に搭載したカメラが設置された照明から座標情報をひも付けたIDを検出することで、移動体の現在位置を算出する自己位置推定技術として活用されている。

JAXAとの共同研究が始動

 こうした実績背景から、ピカリコはJAXAの宇宙探査イノベーションハブが実施した「第6回研究提案募集」において、共同研究テーマとして採択された。GNSSの利用が困難な月面環境における、新たな測位インフラとしての確立を目指し、2021年よりカシオ計算機とJAXAが共同で測位実験を開始した。

 第1回実証実験は2021年に、サーティーフォー相模原球場(神奈川県相模原市)で行った。遠距離測位環境下において、観客席に配置したRGB LEDから送信される信号を受信し、算出された位置情報データの精度を検証した。続く第2回実証では、福島ロボットテストフィールド(福島県南相馬市)において、新たに高さ方向の計測を考慮した3次元測位アルゴリズムを導入し、起伏の激しい地形で車体が傾斜するような条件下においても測位精度が維持されることを実証した。

「白色灯」を測位に活用、輸送コストと消費電力を抑える

 一方で、月面探査において全ての照明をRGB LEDで構成することは、宇宙輸送コストの増大や機材重量の増加、消費電力の確保といった面で大きな課題となる。そこで、実際の月面上では、作業用の一般的な白色灯が設置されることに注目。3回目の実証となる今回は、RGB LEDと汎用的な白色灯を組み合わせて測位を行う、ハイブリッド方式による検証を実施した。

JAXA相模原キャンパス内の屋内実験場「宇宙探査フィールド」 JAXA相模原キャンパス内の屋内実験場「宇宙探査フィールド」[クリックで拡大]
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