ソニーが取り組むサステナビリティ、素材開発などテクノロジーで限界突破へ製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(4/4 ページ)

» 2024年09月04日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]
前のページへ 1|2|3|4       

環境関連技術もグループの技術戦略として推進

MONOist 資源循環などにも新たな技術を積極的に投入している印象ですが、どのようにして進めているのですか。

鶴田氏 ソニーグループとして環境関連での新たな技術開発には積極的だとわれわれ自身も感じています。特に素材開発については、かなり力を入れています。1つのポイントとして、グループ横断で技術的課題に取り組む「技術戦略コミッティ」があり、その中で環境に関するさまざまな技術についての議論が行われていることがあると考えています。例えば、その中にあるメカ戦略コミッティでは、包装材や包装技術の議論や開発も行われており、新規材料開発なども全社のリソースで積極的に行われています。

MONOist ビジネスへの影響など、事業部側からのネガティブな反応はないのですか。

鶴田氏 環境問題に向けた新たな技術を投入できている理由として、企業として強くコミットしているということがあると考えています。経営メンバーや事業部長などが出席するサステナビリティ戦略会議が四半期に1回開催されていますが、その場で目標値の進捗や、新たな取り組みについて情報共有を行っており、それぞれが野心的な目標を示すように求められています。その中で、新たな仕掛けや技術開発に積極的に取り組む機運が事業部側にも自然に醸成されていると感じます。

 確かに事業部側からはそのような声も出るには出ますが、現状に対し購入につなげるためにどうするかという前向きな議論ができています。今は全社としてネガティブな反応はなくなってきており、特に技術陣は「チャレンジしたい」という前向きな姿勢を示してくれています。ある程度の技術的なハードルがあってもコストをかけて乗り越えるようなこともやりやすい状況になっています。

 ただ、それに伴うリソースをどうするかなどの現実的な問題はあるため、どのくらいの期間を想定し、どのくらいの影響度があるかを調整しながら進めていくことが重要です。その中で生み出せたものについては、しっかりそれを訴求し製品価値として評価を受ける形にしていくことが必要です。また、コストなども高いままではその取り組みも広がらないので、材料の調達先を拡大やコスト削減を進めており、そういう手法の開発にも積極的に取り組んでいきます。

サプライチェーンの環境情報収集に向け調達条件なども変更に

MONOist 環境問題に対する技術で注目しているものはありますか。

鶴田氏 産業適用になるにはまだ早いとは思いますが、カーボンキャプチャー(CO2分離回収)に関する技術は注目しています。われわれは製造業ですので、カーボンキャプチャープラスチックなど、カーボンキャプチャーで得た素材により製品を作るようなことができたらとても面白いと考えています。作っている製品に取り込めるような新たな技術に期待しています。

MONOist 現状で環境問題に対する取り組みを進める上で課題と感じている部分はありますか。

鶴田氏 どれも最後までやろうとすると難しいというのが正直な感想ですが、目下の課題としては、先述したようなサプライチェーン全体の脱炭素化についての情報収集だと考えています。製品のライフサイクル全体でのカーボンフットプリントを計算できるようにするため、直接取引ができるところは直接情報共有ができるように1社1社連携を進めていきます。

 一方で、汎用部品など市場からの購買によって入手している部品については、どのような形でCO2排出量削減を進めていくべきかを模索している最中です。特にカメラやスマートフォン端末については電気部品の構成割合も多く、製品ライフサイクル全体のネットゼロを進めるためには、これらの削減は必須です。そのため、今後は一般購入部品について、調達の指標として、部品当たりのCO2排出量などを基準としていく方針です。調達部門でも環境担当者を、メカや半導体、電気部品など、2024年からは部門別に設置してもらうようにしており、徐々に環境視点での調達の強化を進めています。

MONOist ソニーとしての今後の環境問題についての取り組みの目標について教えてください。

鶴田氏 「Green Management 2025」が2025年には終わるので、ソニーグループ全体で2030年の目標について検討しているところです。2030年になると、2040年の達成を目指した気候変動領域における環境負荷ゼロの目標まで残り10年となり、いよいよ現実的な積み上げが必要になってくるため、今真剣に議論しているところです。その意味で、今が次の目標をどの程度に位置付けるかを決める重要なタイミングだと捉えており、目標実現に向けて一歩一歩進めていきたいと考えています。

≫連載「製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか」のその他の記事

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.