東京慈恵会医科大学は、全国5つのリハビリテーション施設と実施した共同研究の成果を発表した。手を振る動きによって、脳卒中後遺症の上肢まひ患者の上肢運動機能が改善することが分かった。
東京慈恵会医科大学は2024年8月8日、全国5つのリハビリテーション施設と共同で実施した、シェイク運動による機能回復に関する研究結果を発表した。
同研究では、脳卒中の後遺症となる上肢まひの外来患者で、ボツリヌス療法を施行する93人を対象とした。患者は、トップランのシェイク運動装置「健康ゆすり」の改良装置を使用する介入群と、外来リハビリテーションの指導を受けながら自宅で自己訓練をする対照群に分けられた。シェイク運動の介入群では、患者がハンドルバーに手を置くか握った状態で、装置がてこの原理を利用して動きを発生させ、患者が手を振るようにした。
1回当たり10分間のシェイク運動を1日に3回、毎日実施した介入群は、12週間後、上肢運動機能の指標である「Fugl-Meyer評価(FMA)」総得点において、有意な改善を示した。特に、中等度の障害を有する患者が最も大きな利益を得ていた。痙縮(けいしゅく)の度合いや関節可動域では有意な改善は見られなかったものの、疼痛と手関節の可動域で改善が見られた。
脳卒中後遺症の上肢まひは、発症から時間が経過すると、まひの軽重を問わず、機能改善が認められなくなると考えられてきた。しかし、同大学はこれまでの研究で、発症から時間がたっても適応基準を満たせば、rTMS(反復性経頭蓋磁気刺激)のような患者への負荷が少ない脳刺激療法でまひが改善することを報告している。
今回の研究により、脳卒中後の慢性上肢まひを改善するためのリハビリテーション治療に、効果の高い新しい選択肢が増えることが期待される。
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