早稲田大学は、レンズ、プリズム、波長板の3種類の光学素子を1枚に統合した小型集積化メタサーフェスを開発した。スマートフォン向け超小型原子時計への展開が期待される。
早稲田大学は2024年7月30日、東京農工大学、情報通信研究機構と共同で、レンズ、プリズム、波長板の3種類の光学素子を1枚に統合した小型集積化メタサーフェスを開発したと発表した。スマートフォン向け超小型原子時計への展開が期待される。
同メタサーフェスは、ルビジウム(Rb)小型原子時計に使われる波長795nmで動作する。入射する拡散直線偏光を円偏光の平行光に変換して、角度を変えて出射を可能とする。
設計段階では、最初に断面が長方形の水素化アモルファスシリコン柱構造(メタアトム)の電磁場解析を実施し、偏光のx方向成分とy方向成分との間に4分の1波長(90度)の位相差を生成できるサイズを抽出した。偏光間の位相差を維持しながら、0〜360度の間で全体の位相遅延を自由にコントロールできるように設計し、8本の異なるサイズの柱を2384×298nmの範囲に並べることによって、プリズムと波長板の2機能の統合ができた。
細かい誤差解析を実施し、寸法誤差が回折効率、集光効率に与える影響を調べるため、プリズムと波長板の2機能の統合と、レンズ、プリズム、波長板の3機能統合の2ケースを実験した。3機能統合では360種類の異なるサイズの柱を0.3×0.3mmの範囲内に設置。その結果、2機能統合では回折効率72.8%、3機能統合では集光効率77.3%の高性能を示した。
同メタサーフェスは、1枚の超薄型素子で光の伝搬方向、集束性、偏光状態を高い効率で同時に精密制御する技術となる。加えて大量生産も可能であることから、次世代の超小型原子時計の開発に貢献する。
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