早稲田大学は、シリカガラスの微細構造を直接観察し、柱状構造の配列がガラスの密度ゆらぎと深い関係があることを解明した。この特性は、ガラス材料を利用する際のイオン伝導特性、強度、光学特性の向上に資する可能性が期待される。
早稲田大学は2024年5月13日、シリカ(SiO2)ガラスの微細構造を直接観察し、柱状構造の配列がガラスの密度ゆらぎと深い関係があることを解明したと発表した。この特性は、電池の負極材や窓ガラス、光ファイバーなどでガラス材料を利用する際のイオン伝導特性、強度、光学特性の向上に資する可能性が期待される。
今回の研究では、ガラスの擬格子面を解明するため、シリカガラスで発生する回折ピーク「FSDP(First Sharp Diffraction Peak)」に着目した。擬格子面とは、ガラスなどの不規則な構造において、局所的に一定の規則性を示す部分を指す。結晶の格子面のように、X線などの短波長を当てた際に波が強め合う原因と考えられている。
研究グループが開発したオングストロームビーム電子回折法を活用し、シリカガラスの1nm以下の局所領域から、FSDPを鮮明に撮影することに成功した。また、同電子回折の理論計算結果を用いて、シミュレーションによる構造モデルからも、この実験結果を再現する局所構造の抽出を可能とした。
抽出した局所構造を解析したところ、原子の柱状構造の配列から擬周期が発生することが分かった。この柱状構造は、ブリッジの役割を担う原子により互いに接続することで、ほぼ等間隔に並んで擬格子面を作っており、これによりFSDPが生じると考えられる。また、この柱状構造に囲まれるように柱状の隙間も形成され、密度ゆらぎの存在が示唆された。
これらの成果は、ガラス構造中の局所秩序を、ナノスケール柱状構造の局所的な配列として考えられることを示している。さまざまな長さの密度揺らぎを柱状構造の配列が作るため、平均的な周期から外れた領域はガラス構造の欠陥として理解できる。その欠陥がガラス材料の特性に影響している可能性があり、これを理解することで、イオン伝導性、機械的物性、光学特性などの向上が示唆される。
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