ジャパンディスプレイは、1つのディスプレイで運転席と助手席向けにそれぞれ異なる映像を表示しながら、左右からのタッチ操作を識別できる車載用ディスプレイ「2ビジョンディスプレイ」を開発した。
ジャパンディスプレイ(JDI)は2024年8月2日、1つのディスプレイで運転席と助手席向けにそれぞれ異なる映像を表示しながら、左右からのタッチ操作を識別できる車載用ディスプレイ「2ビジョンディスプレイ」を開発したと発表した。統合コックピットでの普及拡大を見込む。
運転席向けにカーナビゲーションシステムの画面を見せながら、助手席からは映画を見られるなど、1つのディスプレイで2種類の映像を表示できる。角度によって異なる映像を表示するには画質の低下が課題だったが、独自の画像処理エンジンによってHD相当の高画質を確保した。従来と同じように左右から1つの映像を見ることもできる。
運転席のドライバーと助手席の乗員がそれぞれ自分の見ている表示に応じて操作した際に相手の表示に対して誤操作にならないよう、タッチ操作を識別する。2ビジョンディスプレイは対応可能なサイズに制約はなく、大画面化のニーズにも応えるとしている。
欧州や中国、日本の自動車メーカーに対して提案を進めており、すでに複数の受注が決まっている。開発品の量産は2025年で、前工程は日本の茂原工場(千葉県茂原市)もしくは石川工場(石川県川北町)、後工程は中国を予定している。既存の生産設備を改良して生産できるため、開発品のための設備投資は抑制できるという。
2026〜2027年をめどに、2ビジョンディスプレイの有機EL(OLED)化も進める。車載用だけでなくデジタルサイネージ向けなどにも提案し、2030年までに1000億円の売り上げを目指す。
1台のカーナビゲーションシステムで、運転席と助手席に異なる映像を見せるというコンセプトは過去にもあった。ジャパンディスプレイ 代表執行役会長CEOのスコット・キャロン氏は「(過去の事例は)十分な画質ではなく、やりたいことができていなかった。2ビジョンディスプレイは、十分な画質とタッチ操作の識別という点で過去の例から進化した。自動車メーカーが求める水準もクリアできた」と語った。
2ビジョンディスプレイは、見た目の解像度が従来品の88ppiから177ppiに向上。車内で見る上で実用的に十分な解像度を確保しており、需要に応じて200ppi程度までは開発品でカバーできるという。明るさも従来品の350nitsから700nitsに高めた。コントラストも従来品の350:1から1000:1に改善した。
左右から別の画像を見えるようにするには、左から見える画像と右から見える画像の画素を交互に並べる必要があるが、ただ並べるだけでは、光が折れたり、電気的に干渉したりすることで2つの画像が混ざり合って見える「クロストーク」が発生する。クロストーク対策で専用に開発したASICにより、クロストークの発生状況を解析して補正することで、クロストークのないクリアな画像を実現した。また、1つのパネルの中に左右の映像を分けるバリアを形成するプロセスを刷新したことで高精細さも確保した。
左右の画面が切り替わる位置は搭載位置に合わせて調整可能で、運転席と助手席の中間にあるディスプレイだけでなく、助手席の正面にあるディスプレイでも運転席向けに高精細な表示を見せることができる。
2ビジョンディスプレイを採用する自動車メーカーやティア1サプライヤーは、左右の映像入力信号を用意するだけで開発が完了する。2画面用の合成処理を開発する必要はないとしている。
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