温度感受性TRPV4チャネルが発汗に関与することが明らかに医療技術ニュース

自然科学研究機構 生理学研究所は、マウスの発汗において、温度感受性TRPV4イオンチャネルとアノクタミン1の機能関連が関与することを明らかにした。また、ヒトの汗腺でも、TRPV4イオンチャネルの発現が低下していることも分かった。

» 2024年07月30日 15時00分 公開
[MONOist]

 自然科学研究機構 生理学研究所は2024年7月9日、マウスの発汗において、温度感受性TRPV4イオンチャネルとアノクタミン1の機能関連が関与することを発表した。また、ヒトの難病である特発性後天性全身性無汗症(AIGA)患者の汗腺で、TRPV4イオンチャネルの発現が低下していることも明らかにした。

 TRPV4チャネルは温度感受性TRPチャネルの1種で、皮膚表皮細胞や骨、筋肉、神経などの細胞に発現する。研究グループはこれまでに、TRPV4チャネルとカルシウム活性化クロライドチャネルのアノクタミン1が機能連関することで、脳脊髄液分泌や唾液、涙分泌に重要な役割を果たすことを報告している。

 今回の研究では、汗腺からの発汗に着目し、マウス足底の汗腺の分泌細胞を調査。その結果、汗腺の分泌細胞に、TRPV4チャネルとアノクタミン1、水チャネルのアクアポリン5が共発現していることが分かった。

キャプション マウス足底の汗腺分泌細胞におけるタンパク質発現[クリックで拡大] 出所:自然科学研究機構 生理学研究所

 また、TRPV4欠損マウスと正常マウスの発汗の程度を比較したところ、正常マウスは室温上昇により発汗量が上昇したが、TRPV4欠損マウスは発汗量が低いままだった。正常マウスの足底にTRPV4とアノクタミン1の機能を阻害するメントールやアノクタミン1の阻害剤を塗布すると、発汗量が減少した。これらの結果から、発汗にはTRPV4とアノクタミン1が重要であることが示された。

キャプション ヨウ素デンプン反応によるマウス足底の発汗量 出所:自然科学研究機構 生理学研究所

 ヒトの汗腺についても調査したところ、AIGA患者の無汗部ではTRPV4タンパク質の発現が減少していた。つまりヒトの発汗でも、TRPV4が重要な働きをしていることが判明した。

キャプション ヒト汗腺でのTRPV4タンパク質の発現量[クリックで拡大] 出所:自然科学研究機構 生理学研究所

 一般的に発汗は、脳からの自律神経が調節すると考えられている。しかし今回の成果から、局所でもTRPV4チャネルが温かい温度を感知し、発汗している可能性が示された。また、メントールを塗ったときの爽快感は、冷温を感受するTRPM8の活性化の影響とされるが、TRPV4とアノクタミン1の阻害により、一時的に発汗を抑制することも影響していると推察される。

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