日本ガイシは、「TECHNO-FRONTIER2024」で、リチウムイオン二次電池「EnerCera(エナセラ)」シリーズのチップ型「EnerCera Pouch」とコイン型「EnerCera Coin」を紹介した。
日本ガイシは、「TECHNO-FRONTIER2024」(2024年7月24〜26日、東京ビッグサイト)内の「第39回 電源システム展」に出展し、リチウムイオン二次電池「EnerCera(エナセラ)」シリーズのチップ型「EnerCera Pouch」とコイン型「EnerCera Coin」を披露した。
EnerCeraシリーズは、日本ガイシ独自の結晶配向セラミックス正極板を使用した半固体電池だ。日本ガイシの説明員は「通常のリチウムイオン電池は、活物質をバインダーと組み合わせてスラリー状にして塗工するなどして製造した電極を用いる。一方、EnerCeraシリーズでは、結晶の向きをそろえる『結晶配向』を行いセラミックスを板状に焼結したものを電極に活用している。熱に弱いバインダーを不要とし高温での作動を実現している他、イオン導電性を高める加工を施し低温での作動も可能としている。電解液の使用量が微量なためクギを刺しても発火しない」と話す。
さらに、結晶配向を行っているため電気抵抗が少なく数十mAレベル以上の出力に対応し、通信を行うIoT(モノのインターネット)デバイスの電源として使える。「低消費電力で広域/長距離通信が行えるLPWA(低消費電力広域)ネットワークである『LoRa』や『ELTRES』などに対応している」(日本ガイシの説明員)。そのため、環境発電(エネルギーハーべスティング)やワイヤレス空間電力伝送(WPT)の電源に適している。
既に環境発電の活用事例として一例を挙げると、同社がイーアールアイとトレックス・セミコンダクターと連携して開発した「EsBLE-TYPE2 環境発電モジュール用IoT評価キット」がある。EsBLE-TYPE2 環境発電モジュール用IoT評価キットは、BLE(Bluetooth Low Energy)や温度、湿度、照度、気圧のセンサーを標準搭載したものだ。環境発電モジュールに接続するだけで、発電状況やセンサーの駆動状況を可視化できる。
EnerCeraシリーズでは、厚さ0.45mmと薄型で曲げ耐性があるEnerCera Pouchと、コイン形で厚さ1.3〜2mmの回路基板実装向けのEnerCera Coinの2つのタイプをラインアップしている。
EnerCera Pouchには、大電流タイプ、高温プロセスタイプ、高速充電タイプがあり、さまざまなデバイス設計に対応する。EnerCera PouchとEnerCera Coinの中でも「ETシリーズ」は耐環境性に優れ、ー40℃の低温環境でも使用できるタイプ、フロート充電耐性に優れバックアップ用電源に適したタイプがある。これらはコールドチェーンの温度モニタリングや屋外などに設置するIoTデバイス用電源に適している。
EnerCeraシリーズで最も容量が高い製品はEnerCera Pouchの「EC382704P-T」で27mAhだが、会場では容量100mAhのEnerCera PouchとEnerCera Coinを開発検討品としてコンセプト展示した。日本ガイシの説明員は「2019年に発売したEnerCeraシリーズは既にウェアラブルデバイスやバックアップ電池、スマートカードなどで採用され、実績を重ねている。一方、既存のEnerCeraシリーズ製品に対して、顧客から『容量が物足らないよね』という声があり、100mAhのEnerCera PouchとEnerCera Coinを試作し市場のニーズを探っている」と語った。
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