室内機は、全面的に複数の種類の混流ラインにおけるキット生産方式を採用している。機種ごとに必要となる部品が異なるため、複数機種を同一ラインで製造する混流生産を実現するには、必要な部品の手配が複雑になることが課題となるが、静岡製作所では必要な部品をハンガーでワークと並行して流し、その部品をピックアップして組み立てていく。
また付随作業が必要な部品については、組み立てラインに並行する形で準組み立てラインを構築している。例えば、室内機に組み込む熱交換器のろう付けラインなどを設置している。ろう付けで使うバーナーなどは現場での改善活動により形状などの工夫を図っており、現場起点でさまざまな改良を進めているという。
製品は全数検査を行っており、異常があった場合にはすぐにタブレットで記入し、それをデータベースとして活用する他、これらを分析して製造工程に問題があることが分かった場合はすぐに改善につなげられるようにしている。製品と一緒に流れる「組み立てカード」とする帳票を管理することで工程ごとの作業状況を把握している。
さらに、最終梱包作業も効率化を進めるために、型番の入っていない無地の梱包材で自動梱包し、最終的に帳票に合わせた型番情報を梱包後に印字する方式を採用している。
一方で、一部の高級機種では、ろう付けなどの技術が複雑である他、製品ごとのバリエーションなども多く、これらに対応するためにセル生産ラインも用意している。セル生産では高度な技能者が複数の作業を担う「作業ナビ」を用意している。作業指示をディスプレイで示しつつ、実際の作業内容を工具の稼働データと照らし合わせ、作業品質の確認などを行うことができるようにしている。
三菱電機 静岡製作所 ルームエアコン製造部長の中川英知氏は「静岡製作所では国内向けのルームエアコンの全機種を生産しているため、標準モデルなど量が多いものから高級モデルなど量が少ないものまでを効率よく作る必要がある。そのため、ベルトコンベヤーによる混流生産ラインと、セル生産をバランスよく活用して生産を行っている」と述べている。
今後はさらに製造ラインにおいてDXを進めていく方針だ。中川氏は「現状でも異常時の情報のタブレット端末による収集とデータベース化や、セルラインにおける工具データの活用などを進めているが、将来的には製造ラインで起こっているさまざまな事象をリアルタイムで把握して活用できるようにしていきたい。検査データなどもリアルタイムに反映し、即時で原因を解決できるような仕組みを目指したい」と語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.