衛星事業では、2021年1月に人工衛星開発子会社として設立したOur Starsを、2023年8月に衛星開発部としてISTに統合している。ISTの垂直統合ビジネスの強みを追求するための施策であり、今後Our StarsはISTの人工衛星技術を用いた宇宙利用サービスブランドとして活用していく方針だ。
ISTが衛星事業で狙いを定めているのが「衛星ブロードバンド」の市場である。既にスペースXの「Starlink」をはじめ、地球低軌道の衛星コンステレーションを用いた通信事業が実用化されているが、ブロードバンド通信を行うには大型の地上アンテナが必要になる。
Our Starsでは、数百〜数千機の超小型衛星を用いた衛星コンステレーションを電磁石を用いて等間隔に並べる「フォーメーションフライト」によって、地上アンテナが不要な高速大容量の衛星通信の実現を目指す方針である。「超小型衛星のフォーメーションフライトによって、数十mサイズのアンテナを作ることができる。これにより、地上アンテナを使わなくても衛星通信によりスマートフォンで動画配信を楽しめるようにしたい」(稲川氏)という。
ISTは、フォーメーションフライトによって実現する「衛星通信3.0」に向けて、通信技術と飛行制御の開発を進めているところだ。通信技術については、総務省からの委託による岩手大学、大阪大学、東京工業大学、奈良先端技術大学、新潟大学との共同研究に加えて、NICT(情報通信研究機構)からの出資も受けている。飛行制御については、ロケットから多数の超小型衛星を放出する際の状態に関するシミュレーションや、電磁石を用いた3体定位置制御を低重力下で実験するための準備を進めている。
稲川氏は「衛星通信3.0の事業化に向けて、早いタイミングで通信キャリアなどとの連係について発表できるようにしたい」と述べている。
日本初の民間液体ロケットエンジンは脱炭素、北海道大樹町が民間宇宙産業の中心に
2024年は月面探査の記念碑的な1年に、失敗続く民間月面着陸もついに実現するか
小型人工衛星用ロケットエンジンのガスジェネレーターの燃焼試験に成功
乾坤一擲の賭けに勝った観測ロケット「MOMO」、2年ぶり打ち上げ成功にみる実力
観測ロケット「MOMO」の打上成功から何が生まれるのか、次なる挑戦は「ZERO」
衛星軌道投入ロケット「ZERO」は“みんな”で開発、MOMO2号機の失敗が教訓にCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
組み込み開発の記事ランキング
コーナーリンク
よく読まれている編集記者コラム