2024年もさまざまな話題がある宇宙開発。中でも「月面探査」はさまざまな取り組みが行われ、記念碑的な1年となりそうだ。この他、「ロケット関連」「深宇宙探査」の動向も紹介する。
日本の宇宙開発にとって、2023年は、非常に厳しい1年となった。期待されたH3ロケット初号機は、2年の延期の末にようやく打ち上げの日を迎えたものの、まさかの第2段でトラブルが発生し、衛星の軌道投入に失敗。一方、開発が大詰めを迎えていたイプシロンSロケットは、第2段が地上燃焼試験中に爆発、設備も大きな被害を受けた。
だが2024年は、良い1年になると期待したい。本稿では、宇宙分野における2024年の注目イベントについて、まとめてみよう。
2024年の話題は、とにかく月面探査に尽きる。いきなり1月から、大きな話題が連続。ここ数年、展望記事では毎年「月面探査」と言い続けているような気もするが、2024年こそ間違いなく、記念碑的な1年となるだろう。
新年早々、まず1月8日には、米Astroboticの月面ランダー「Peregrine」が打ち上げを実施した。民間初の月面着陸を目指したものの、ロケットからの分離直後に推進剤が漏れるという深刻な異常が発生。月への接近は諦め、地球に戻ってきたところで再突入させ、約10日間のミッションを終えた。
同社の月への最初の挑戦は失敗に終わったが、続いてより大型のランダー「Griffin」を打ち上げる計画がある。これは、NASA(米国航空宇宙局)の月面ローバー「VIPER」を搭載するというミッション。月の南極に降りて、そこで氷などの資源を調べる予定だ。SpaceXのFalcon Heavyロケットで2024年後半に打ち上げられる。
※)Astrobotic「Peregrine」「Griffin」
続いて、1月20日には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小型月着陸実証機「SLIM」が、月への降下を開始。月面まであと一歩という高度50mでメインエンジンの1基を失うというトラブルがあり、予定していた2段階着陸はできなかったものの、ソフトランディングには成功、ついに、日本初の月面着陸を実現させた。
搭載した2台のローバー「LEV-1」「LEV-2」(SORA-Q)の分離にも成功。正常に動作したことが分かっており、LEV-1は世界初の月面跳躍移動、SORA-Qは世界最小/最軽量の月面ロボットとなった。SORA-Qからは、月面でSLIMを撮影した衝撃的な画像も到着。科学観測にも成功し、プロジェクトとしては、満足できる結果となった。
そしてここからは、今後の予定である。
米Intuitive Machinesは、月面ランダー「Nova-C」を2月半ばに打ち上げるとしている。民間による月面着陸は、イスラエルのSpaceIL、日本のispace、米国のAstroboticと、これまで、失敗が続いている。それだけ月面着陸は難しいということであるが、今度こそ民間初の月面着陸が実現するか、注目だ。
このミッションのペイロードでは、大学が開発した「EagleCam」が特にユニークだ。ランダーが着陸するシーンを見たい、というのは、誰でも一度は思ったことがあるだろう。これは、まさにそれを目指したもの。着陸の直前にランダーから分離され、世界初の着陸シーンの“自撮り”を狙うという。成功することを期待したい。
※)Embry-Riddle Aeronautical University「EagleCam」
民間による月面着陸は、この他、ispaceも実施する計画だ。ランダーは前回と同型で、失敗の原因となったソフトウェアを修正し、2回目の挑戦で初の成功を目指す。このミッションでは、自社開発のローバーも初搭載。Google Lunar XPRIZEで目標としていた月面走行を実現できるか注目だ。早ければ2024年冬に打ち上げられる見込みである。
また、中国は2024年前半に、「嫦娥6号」を打ち上げる予定。中国は嫦娥シリーズで、周回→着陸→裏側への着陸→サンプルリターンと、着実に成果を積み重ねてきたが、今回は、裏側からのサンプルリターンに挑む。これまで、人類が入手した月面のサンプルは、全て表側のものだった。初めて裏側のものを地球に持ち帰るかもしれない。
※)中国「嫦娥6号」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.