2021年もさまざまな話題がある宇宙開発。今回は、「大型ロケット開発」「民間の小型ロケット」「商業化が進む月面探査」の3つをテーマに、2021年の動向を見ていきたい。
2021年の展望記事を書くに当たり、まず2020年の記事を見直してみたのだが、筆者はまず、火星探査について紹介していた。結果的に、欧州・ロシアの「ExoMars」のみ延期になったものの、その他の米国、中国、UAEの探査機は予定通り打ち上げられ、2021年2月に相次いで到着している。本年は、火星からこの観測成果が届くのが非常に楽しみである。
宇宙開発では、2021年もさまざまな話題がありそうだが、今回の記事では、「大型ロケット開発」「民間の小型ロケット」「商業化が進む月面探査」の3つをテーマに、動向を見ていきたい。1つ1つについて詳しく紹介できないので、興味がある話題については、記事の中で紹介している公式Webサイトを見るなどしてチェックしてほしい。
まず紹介したいのは、各国の大型ロケット開発の状況だ。2021年も、さまざまな新型ロケットの初打ち上げが予定されている。大型ロケットの開発は極めて難易度が高く、延期も当たり前の世界であるため、本当に予定通り進むかは何とも言えないのだが、現時点での状況について見ていくことにしよう。
日本の「H3」ロケットは、既報の通り、初号機の打ち上げが1年延期された。新たな打ち上げ時期は「2021年度」であるため、実際には2022年1〜3月になる可能性も高いが、その前に、種子島では各種試験が行われ、年内には、射点に立つH3ロケットの姿が見られるだろう。開発の進捗状況については、引き続き注目していきたい。
なお延期の原因となったLE-9エンジンの技術的な問題については、下の記事が掲載済み。何が起きたのか、詳しくはそちらを参照してほしい。
米国では、ULA(United Launch Alliance)が「Vulcan」を開発中。ULAは現在、長らく米国の宇宙開発を支えた「Atlas V」「Delta IV」を運用しているが、高コスト体質が大きな課題だった。またAtlas Vは、第1段エンジンをロシアに依存するという、安全保障上の問題も抱えており、後継機としてVulcanの開発が進められていた。
H3の例を見ても分かるように、開発の大きなカギとなるのは第1段エンジンだ。Vulcanは、ここにBlue Originが開発している「BE-4」を搭載。BE-4は、推進剤としてLNG(液化天然ガス)と液体酸素を使うという、野心的なエンジンである。LNGは、一般的なケロシン系の燃料よりも高性能にできるが、第1段エンジンとして実用化した例はまだない。
ULAという伝統企業と、Blue Originという宇宙ベンチャーの協業という点でも注目したいところだ。初号機には、米Astroboticの月面ランダー「Peregrine」を搭載する予定。打ち上げ時期はまだ分からないものの、BE-4の開発が遅れ気味のため、早くても2021年後半ではないだろうか。
また米国といえば、超大型ロケット「SLS(Space Launch System)」も一応年内の打ち上げを予定しているが、これは正直どうなるかさっぱり読めない。SLSはスペースシャトルのレガシーを活用したロケットで、これまでも計画の変更や遅延を繰り返してきた。今回政権が変わったことで、また見直される可能性も高いだろう。
SLSは、有人月探査計画「Artemis」で使用する予定。初号機では「Orion」宇宙船を無人で搭載し、月に向かうのだが、注目したいのは、一緒に日本の超小型探査機「EQUULEUS」と「OMOTENASHI」も搭載されるということ。どちらも6Uサイズのキューブサットながら、そのミッションは非常にユニークなので、期待したいところだ。
※)「EQUULEUS」と「OMOTENASHI」のWebサイト
そしてもう1つ注目してほしいのがSpaceXの「Starship」だ。Starshipは将来の有人火星探査を見据えた大型宇宙船なのだが、2020年末、同社はその試作機「SN8」のテストフライトで大爆発を起こし、宇宙ファンの話題を一気にかっさらった。2021年も既に2月に「SN9」を大爆発させており、この開発ペースの早さには驚くばかりだ。
宇宙開発に爆発は付きものとはいえ、昨今ではここまで派手な爆発を見る機会はそうない。あまりの絵面のインパクトに、筆者などはつい、VRChatでこのテストフライトを体験できるワールドを作ってしまったほど。VRChatが使える環境の人は、ぜひ楽しんでもらえればと思う(VRChatはゴーグルなしでも利用可能)。
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