今後、大きな成長が見込まれているのが小型・超小型衛星である。この打ち上げ需要を取り込むために、大型ロケットはライドシェアに対応。多数の衛星を搭載することで、1機当たりのコストを大幅に下げることを見込む。一方、小型ロケットを使えば、自由に軌道や時期を選べるというメリットがある。
大規模な衛星コンステレーションでは大型ロケットを使うことになるだろうが、一品モノの衛星などでは小型ロケットの需要拡大が期待されており、各国で開発が進んでいる。この分野では、既にRocket Labの「Electron」が1強になりつつあり、2番手争いがどうなるか、というのが現在の状況である。
米Virgin Orbitの「LauncherOne」は、空中発射方式のロケットだ。ジャンボジェットを改修した母船「Cosmic Girl」に搭載して、滑走路から離陸。上空で分離後、点火するため、地上の天候に左右されにくいというメリットがある。2020年の打ち上げは失敗していたものの、2021年1月に実施した2回目の飛行でついに軌道投入に成功した。
空中発射方式のロケットとしては、1990年代から実用化されていた「Pegasus」という例がある。打ち上げ実績は44ミッション、95衛星と需要はそこそこあったが、LauncherOneがどこまで打ち上げ回数を獲得できるのか気になるところだ。
※)Virgin Orbit「LauncherOne」のWebサイト
また米Firefly Aerospaceは、2021年早々にも「Alpha」を打ち上げるもようだ。このロケットは、直径1.8m、全高29mというサイズで、打ち上げ能力は630kg(SSO/500km)。Electronよりは一回り大きく、むしろ日本の「イプシロン」クラスといえる。これで価格は1500万米ドル(約16億円)という安さなのだから、インパクトは大きいだろう。
なお同社は月面ランダー「Blue Ghost」も開発しており、先日、NASAの「CLPS(商業月面輸送サービス)」プログラムに採択されたことが明らかになった。受注金額は9330万米ドル(約98億円)で、2023年にNASAの10機器(合計94kg)を月面まで輸送する計画だという。ロケットとともに、ランダーも注目したいところだ。
※)Firefly Aerospace「Alpha」のWebサイト
日本では、引き続きインターステラテクノロジズ(IST)に注目していきたい。同社はまだ、軌道投入に挑戦できる段階ではないものの、2019年、観測ロケット「MOMO」で宇宙空間への到達には成功。3号機以降、しばらく成功から遠ざかってはいるが、2021年は7号機、6号機と2機が順次打ち上げられる見込みだ。2回目の宇宙到達を期待したい。
今夏の打ち上げを予定している6号機では、初めてペイロードの回収にも挑戦。そのために、フェアリングの開頭機能やペイロードの放出機構を追加する。これらの機能は、同社が開発中の超小型衛星用ロケット「ZERO」で必須となる技術。打ち上げで実証する機会としても、非常に重要だといえるだろう。
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