「RT-11」はUNIXの“/usr”ディレクトリの語源なのか 歴史と機能から検証するリアルタイムOS列伝(48)(3/3 ページ)

» 2024年07月03日 07時00分 公開
[大原雄介MONOist]
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RT-11が“/usr”ディレクトリの語源になるわけがない

 さてそんなRT-11だが、当初からSystem Componentとして提供されているものにRMON(常駐型のMonitor)とKMON(キーボード用Monitor:コンソールからの入出力管理)、USR/CSI、Device Handler、それとSystem Programsがある(図2)。

図2 図2 RT-11のマニュアルでUSR(User Support Routine)を説明しているページ。ちなみに、RT-11はv1とv2ではマニュアルの構成がかなり違っており、v1ではこのUSR/CSI向けの説明がほとんど皆無である。このためv2のマニュアルから引用している[クリックで拡大]

 USRは“User Support Routine”、CSIは“Command String Interpreter”の略である。USRの方はこちらの説明にあるように、プログラムからファイルを扱えるようにするためのFile Handleと、そのFile Handleに対しての操作(Open/Read/Write/Close)の機能を提供するためのもの。一方、CSIはコンソールから対話的に操作を行うためのもので、MS-DOSでいう所のCOMMAND.COMに相当するものと考えてもらえればよい。このCSRは、もともとはRSX-11上でMCR(Monitor Console Routine)としてまず提供され、後にDCL(Digital Command Language)としてより使いやすくなったサブセット的なものであり、後のRT-11ではCSRもDCLに進化している。

 このUSR/CSIだが、System Componentではあるものの必須ではない。先にも説明したように、RT-11を利用するシステムが必ずしもディスクを使うとは限らないからUSRのロードは必須ではないし、最低限の制御が可能なMonitor(KMON)は別に搭載されているから、ユーザーが対話的に操作するのでなければCSIも必要ない。そんな訳でシステム構成(これを行うためにSYSGENというユーティリティーも用意されている)の際にUSR/CSIは外すことが可能である。

 冒頭の話に出てきた「UNIXの/usrの語源である“User Service Routine”」の実態はこんなものである。どう考えても、これがUNIXに影響を及ぼすようなものではない、というのがご理解いただけたかと思う。まぁ普通のユーザーはRT-11のことなど知らないだろうから、そう誤解しても無理もないのかもしれないが。

 さてそんなRT-11だが、後継のMicroVAX+VAXELNの登場によりどんどんマーケットが置き換えられていったこともあり、DECも2000年代に入ってRT-11のサポートをどんどん減らしていった。最後のPDP-11は、1990年に登場したPDP-11/93とPDP-11/94だが、1980年代からDECはVAXの方に注力しており、PDP-11やRT-11/RSX-11を積極的に販売する理由は全くなかった。結局COMPAQによるDEC買収の後に行われたリアルタイム製品のSMART Modular Technologiesへの売却に合わせて、VAXELN同様に消えてしまったのだった。

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