さてそんなRT-11だが、当初からSystem Componentとして提供されているものにRMON(常駐型のMonitor)とKMON(キーボード用Monitor:コンソールからの入出力管理)、USR/CSI、Device Handler、それとSystem Programsがある(図2)。
USRは“User Support Routine”、CSIは“Command String Interpreter”の略である。USRの方はこちらの説明にあるように、プログラムからファイルを扱えるようにするためのFile Handleと、そのFile Handleに対しての操作(Open/Read/Write/Close)の機能を提供するためのもの。一方、CSIはコンソールから対話的に操作を行うためのもので、MS-DOSでいう所のCOMMAND.COMに相当するものと考えてもらえればよい。このCSRは、もともとはRSX-11上でMCR(Monitor Console Routine)としてまず提供され、後にDCL(Digital Command Language)としてより使いやすくなったサブセット的なものであり、後のRT-11ではCSRもDCLに進化している。
このUSR/CSIだが、System Componentではあるものの必須ではない。先にも説明したように、RT-11を利用するシステムが必ずしもディスクを使うとは限らないからUSRのロードは必須ではないし、最低限の制御が可能なMonitor(KMON)は別に搭載されているから、ユーザーが対話的に操作するのでなければCSIも必要ない。そんな訳でシステム構成(これを行うためにSYSGENというユーティリティーも用意されている)の際にUSR/CSIは外すことが可能である。
冒頭の話に出てきた「UNIXの/usrの語源である“User Service Routine”」の実態はこんなものである。どう考えても、これがUNIXに影響を及ぼすようなものではない、というのがご理解いただけたかと思う。まぁ普通のユーザーはRT-11のことなど知らないだろうから、そう誤解しても無理もないのかもしれないが。
さてそんなRT-11だが、後継のMicroVAX+VAXELNの登場によりどんどんマーケットが置き換えられていったこともあり、DECも2000年代に入ってRT-11のサポートをどんどん減らしていった。最後のPDP-11は、1990年に登場したPDP-11/93とPDP-11/94だが、1980年代からDECはVAXの方に注力しており、PDP-11やRT-11/RSX-11を積極的に販売する理由は全くなかった。結局COMPAQによるDEC買収の後に行われたリアルタイム製品のSMART Modular Technologiesへの売却に合わせて、VAXELN同様に消えてしまったのだった。
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