精製工程では、ガス洗浄設備やCO転化設備、脱硫設備を用いて、ガス化工程で生成した合成ガスから不純物を取り除く。ガス洗浄設備では、合成ガスをアルカリ水で中和し塩に戻して洗浄する。この工程により不純物を除去した合成ガスを、CO転化設備で350℃まで加熱し水蒸気と反応させ、水素とCO2に転化する。続いて、水素とCO2が主体となった合成ガスに含まれる、ゴム類などに由来する硫化物を脱硫設備で硫黄に戻し取り除く。
精製工程で不純物を除去し水素とCO2が主体となった合成ガスは圧縮された後、川崎事業所内のアンモニア製造設備へと送られる。アンモニア製造工程では、アンモニア製造設備の脱炭酸塔で合成ガスをCO2と水素に分解し、CO2はグループ会社のレゾナックガスプロダクツへ運搬され炭酸飲料用やドライアイス用の炭酸ガスとして利用される。大部分の水素はアンモニア製造設備の合成塔で窒素と合成されアンモニアとなり、環境調和型アンモニア「ECOANN(エコアン)」として販売されている。一部の水素はそのままニーズのある企業に供給されている。
川崎キングスカイフロント東急REIホテルは、2018年6月1日に開業したホテルで、環境省の「地域連携/低炭素水素技術実証事業」として、「水素サプライチェーンの構築」および「最先端の技術による低炭素化の実現」を2022年3月末まで実施し、2023年9月からは独自の取り組みとしてこれらを継続している。
構築した水素サプライチェーンでは、まず川崎市の家庭から排出された使用済みプラスチックごみを、レゾナック川崎事業所のプラスチックケミカルリサイクル事業でリサイクルする。次に、リサイクルにより生成した水素をパイプラインを通して川崎キングスカイフロント東急REIホテルに送る。続いて、川崎キングスカイフロント東急REIホテルに設置された純水素型燃料電池によりこの水素を電気に変換し、ホテル内の電力として利用している。
さらに、川崎キングスカイフロント東急REIホテルでは、JFEグループのJバイオフードリサイクルとアーバンエナジーと協業し、ホテルから排出される年間6500kgの食品廃棄物を100%リサイクルするとともに、この廃棄物を用いた電力の活用を実現している。
具体的には、川崎キングスカイフロント東急REIホテルが排出した食品廃棄物はJバイオフードに送られ、Jバイオフードはこの廃棄物を用いてバイオガス発電を行い創出した電力をアーバンエナジーに送る。アーバンエナジーはこの電力とJFEグループの「ゼロ・エミプラン」で得られた再生可能電力を合わせて川崎キングスカイフロント東急REIホテルに供給している。ゼロ・エミプランとはJFEグループで創出した再生可能電力のみを切り出して供給するサービスを指す。
これらの取り組みにより、川崎キングスカイフロント東急REIホテルでは使用電力の全てをCO2フリー電力としている。使用電力全体のうち水素サプライチェーンで得られる電力は20%を占め、Jバイオフードリサイクルとアーバンエナジーとの協業で得られる電力は80%となる。
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