田口 サービスとして、体験として届ける時に、最適なものは何かと考えた時、サプライチェーンの在り方は一様ではないですよね。自動車自体は一種類かもしれないけれど、届け方やサービスは全然違う可能性があるという前提に立たないと、大局を見誤ります。
次に話したいのが、サプライチェーンに期待される変化です。ここでチェーンからウェブへという話になります。柔らかいサプライチェーンが必要と話していたのですが、さらにコンセプトを先に進めていきます。ここは『サプライウェブ』という書籍も出されている小野塚さんに教えていただきたいです。
小野塚 チェーンからウェブへと言ったとき、自動車の話をしてきましたが、実際には自動車に限りません。例えば、白物家電でも、ハイアールは、冷蔵庫の扉の色や大きさを組み替えられるマスカスタマイゼーションでの販売を上海で開始しています。アパレル、薬品、食品などいろんな形が出てきています。作って卸して販売するといった従来型の一直線の流れではない取引が増えています。チェーンであることのメリットは、いつも同じ調達先で同じ販売先だから、自動車メーカーがこのパレットを使いましょうといえば、みんなが使って便利になるということです。でも、そうではなくなるわけです。今まで取引がなかった企業からモーターを調達して、届け先は(カーシェアのクルマがある)駐車場ですと伝えることもあるでしょう。
ウェブ化するとこうして取引先が増えるわけです。サプライチェーンの世界がインターネットのような世界になるわけです。そういう時代になった時に、従来のサプライチェーン構成企業が共通して使っていたパレットを、新しい取引先が率先して使ってくれるかどうかは分かりません。
最も重要なのは、誰もが使えるプラットフォームが必要だということなのです。インターネットもそうです。誰かがウェブブラウザやYouTubeというアプリを作ってくれて、みんなが便利に使えるように提供してくれたから普及したのです。YouTubeで言えば、動画を作っているのはYouTube自身ではないですね。配信したい人が配信して、見たい人が見るといったネットワークのハブのような存在がなければ、サプライウェブは成立しないでしょう。
いきなり全部をウェブでつなげられるかというと難しいでしょう。いくつか切り口があると思います。1つ目は、さまざまなところから調達する時に、要求するスペックの製品の売り場所、在庫の有無、工場の稼働といった情報や、その商品を求める企業がどこにいるのかといったことがデジタルでつながって可視化されていれば、売りやすいですね。そのため工場サイドのプラットフォームが1つの軸になります。
2つ目としてロジスティクスも重要です。サプライウェブになってもロジスティクスは変わらないのではという声もありますが、変わるのです。サプライチェーンの場合、いつも同じ場所を行き来することが多かったわけです。しかし、サプライウェブの場合は、行き先はいろいろあり、毎日のように変わります。変種変量生産になるからこそ、1回当たりに扱う量も減るのです。それなら、トラックもシェアした方がいいですね。そうなると、空いているトラックや空きスペースをシェアできるロジスティクスのプラットフォーマーも必要になります。
田口 タイムリーに運べるからこそ在庫を抱える必要がなくなり、運ぶ量が減るわけですよね。
小野塚 その通りです。さらに、ユーザーという最後の軸があります。今ならディーラーを通じて乗り心地はどうですかと聞けます。将来、駐車場にだけクルマを置かれたりすると、乗り心地や使い心地といった情報が入ってこなくなります。そのため「作る」方も「使う」方も、ネットワーク化する仕組みが必要になります。さらに「作る」と「使う」をつなぐ存在が必要です。それを実現する存在がプラットフォーマーなのです。
田口 ユーザー側も多様化しています。カーシェアの場合も、クルマの中で寝るために利用する人もいるくらいです。使い方がフィードバックされて、通常は適切なサービスへと変わっていきます。新しいサービスにつなげていくためのきっかけになるのです。その情報がより早く届くようにするためには、チェーン経由ではなくて、タイムリーにウェブでユーザーに届くという形が理想的です。
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