日本の基幹産業である製造業にも、デジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せています。今回は「サプライウェブで実現するマスカスタマゼーション時代の企業戦略」をテーマに、コアコンセプト・テクノロジー取締役CTOの田口紀成氏と、CCTのアドバイザーでもある福本勲さんのお二人がローランド・ベルガーの小野塚征志さんを招き鼎談を行いました。
本連載は製造業のDXに携わる人のためのメディア「Koto Online」に掲載された記事を、一部編集した上で転載しています。記事の情報は、Koto Online掲載時の2023年3月時点のものです。Koto Onlineは業界のトップランナーへのインタビュー等を通し、製造業の未来に触れられるコンテンツを発信しています。
日本の基幹産業である製造業にも、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せています。そして注目すべきは製造業の根幹である「サプライチェーン」にも新たな動きが見えてきた点です。今、企業の次世代サプライチェーンの考え方として注目されている新たなキーワードが「サプライウェブ」です。
今回は「サプライウェブで実現するマスカスタマゼーション時代の企業戦略」をテーマに、コアコンセプト・テクノロジー(CCT)取締役CTOの田口紀成氏とCCTのアドバイザーでもある東芝の福本勲さんのお二人がローランド・ベルガーの小野塚征志さんを招き鼎談を行いました。
田口(以下、敬称略) 前回福本さんとESGの話をした時に、今後のサプライチェーンには従来のように堅いものではなく、もっと「柔らかさ」が必要ではないかという問題提起をしました。ただ、その実現にデジタルが貢献できると提言したところまでで終わっていました。ここで、新たな形として登場するのがサプライウェブという概念です。私自身がサプライウェブにピンときたので、この場を設定しました。まずはその背景をお聞きします。
福本 前回の鼎談ではESGを取り上げました。化石燃料からカーボンニュートラルへ、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへといった不可逆的な移行に伴い、地球環境問題への意識が高まると、サプライチェーンの在り方も変化していくと考えます。垂直統合型・集中型から、網目状につながった分散ネットワーク型へと移行していくイメージです。その結果、サプライチェーンからサプライウェブへの移行も進むと考えています。
自動車業界に目を向けると、数年前から自動車産業に起きている変化として、CASE(Connected、Autonomous、Shared&Service、Electric)と呼ばれる新しい概念が話題になっています。自動車をEV(電気自動車)化していくという変化はもちろんですが、自動車産業や周辺の産業を変えていくものでもあります。例えば、EV化をすると、自動車が走るときに温室効果ガスは出なくなりますが、EVに与えている電力を発電するときに温室効果ガス排出にも目を向けなければいけません。
効率的に自動車を走らせるために、信号機などの社会インフラをより充実させて、歩行者がいない場合は自動車にとっての青信号の点灯時間を長くするといった制御ができれば、温室効果ガスの排出抑制などを含めた社会全体の効率化が図れます。しかし、実現するためには、従来自動車の製造に関わってきたプレイヤーとサプライチェーンだけではおそらく実現できません。そうしたデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、産業の構造変化が起きると考えています。
田口 いろいろな自動車の在り方が出てきていますね。ESGやサステナビリティを実現する世界では、ものをつくる過程だけでなく、ユーザーの視点、使用による結果を踏まえて考えていくことがトピックとなっています。ここで、使う側の景色に焦点を当てようと思います。
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