今回の合同取材では、商品価値に基づく適正価格販売に向けた新販売スキームや、欠品ゼロを目指す実需連動SCMをはじめ、新生パナソニックの発足時からさまざまな施策を導入してきた白物家電事業のLASについての質問が相次いだ。
LASが2022〜2023年度にかけて減益となったのは、コロナ禍による巣ごもり需要がピークとなった2021年度に対して2022〜2023年度に白物家電の需要が大幅に減少したことだけでなく、各製品市場でのシェアが目標未達だったことも要因になっている。例えば、冷蔵庫と電子レンジはシェア1位から2位、炊飯器は2位から3位に低下している。
このシェア低下をもたらしたのは、国内メーカーへのOEM供給を含めた中国勢の台頭にある。炊飯器市場は既に約50%が中国勢に占められており、パナソニックの国内シェアが1位から2位になった冷蔵庫や電子レンジ、2023年度も同社が国内シェア1位を維持したドラム式洗濯機でもその影響は顕著だ。
この国内シェア低下は、「ハードウェアの価格競争力」が中国勢に対抗できなくなっていることが原因だ。合同取材での質疑応答では、圧倒的な価格競争力で国内市場で台頭する中国勢に対して、パナソニックが白物家電事業を続ける意義を問う質問もあった。品田氏は「パナソニックグループにとって白物家電は祖業の一つであり、グループ全体に占める売上高比率も含めて社内での位置付けは他企業とは大きく異なる。また、現時点で中国勢と比べてEBITDA率が大きく異なるわけではないので、もっとやれることはあるだろう。パナソニックグループ内に生活を向上させる商品が多数あり、白物家電事業による顧客接点は他にも多数ある民生向け事業でも活用できる。白物家電はブランドビジネスでもあり、パナソニックが生活に広くコミットしているという事実には大きな意味がある」と説明する。
とはいえ、白物家電事業を継続していくためには、ハードウェアの価格競争力の向上によるシェアアップは避けて通れない。モノづくりの手法を大きく変える必要がある。「これまでパナソニックにおける白物家電のモノづくりは、サプライチェーンの観点もあって地産地消で進めてきた。しかし、中国やアジアの市場が成熟する中で各市場の要求は複雑化しており、地産地消が効率が良いとはいえなくなっている。中国勢は、中国内に生産効率を高めた工場を設けた上で、仕向け地ごとに仕様を変えるという戦略で価格競争力を高めている。そして、パナソニックで中国事業を展開する中国・北東アジア社(CNA)は、中国市場で大手中国メーカーに対抗するためのベストプラクティスを得ている。これを、日本とアジアで展開していく」(品田氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.