三井化学は、EUV露光用カーボンナノチューブ(CNT)ペリクルの生産設備を岩国大竹工場(山口県和木町)に設置する。
三井化学は2024年5月28日、半導体のさらなる微細化や生産性向上に役立つEUV露光用カーボンナノチューブ(CNT)ペリクルの生産設備を岩国大竹工場(山口県和木町)に設置することを決定したと発表した。
岩国大竹工場で新設するEUV露光用CNTペリクルの生産設備は、年間5000枚の同製品を生産できる。完成は2025年12月を予定している。
半導体ウェハーに光を照射して回路パターンを描くフォトリソグラフィ工程で、各露光波長に対して耐光性がある膜材料を選択し、高い透過率を得られるように膜厚設計したフォトマスク用防塵(ぼうじん)カバーがペリクルだ。ペリクルは、フォトマスクをクリーンに保ち、半導体の生産性向上に貢献する。三井化学は、ペリクルを1984年に発売して以降、半導体の微細化に合わせてペリクルの改良と製品品質の向上を行ってきた。
近年、情報共有を円滑化する目的でさまざまな企業がICT技術に関心を寄せている。ICT技術のうち、第5世代移動通信システム(5G)上でAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータを活用するテクノロジーは、今後ますます普及するとみられている。
これらのデータ処理を担う半導体には、高速処理能力や電力の低消費が求められている。これらの機能を実現するために、回路線幅7nm以下の超微細化ニーズが高まっており、微細化回路形成用のEUV(波長13.5nmの極端紫外線)露光技術の採用が拡大している。
そこで、三井化学は、オランダのASMLからEUV露光用ペリクル事業のライセンスを受け、2021年に商業生産を岩国大竹工場で開始し、拡大する先端半導体需要に対応している。
次世代のEUV露光装置は、開口度0.55という高い開口数(NA)と高出力(≧600W)化が求められている。これらの露光技術を実現するためには、過酷な露光環境に耐えられる新たな素材のペリクルが必要とされている。
同社はこれらのニーズに対応すべく、高いEUV透過性(≧92%)と1kWを超える露光出力への耐光性を兼ね備えたCNTペリクルの事業化に向けた量産用設備を設置することを決定した。
膜材にシリコン系素材を使用した既存のEUVペリクルに加えて、CNTを膜材に使用した次世代製品をラインアップすることで、半導体の高性能化と生産性向上に貢献する考えだ。
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