東京大学らは、臭化タリウムを直接変換膜とした高精度、高感度なX線イメージセンサーの作成手法を確立した。超大型イメージセンサーやフレキシブルセンサーなどへの応用が期待される。
東京大学は2024年5月10日、臭化タリウム(TlBr)を直接変換膜とした、高精度かつ高感度なX線イメージセンサーの作成手法を確立したと発表した。東北大学、ジャパンディスプレイとの共同研究による成果だ。
臭化タリウムの密度は7.56g/cm3と非常に高く、X線に高い感度と信号雑音比を有する。今回の研究では、460℃と比較的低い融点を利用して、蒸着手法によるX線イメージセンサーを開発した。
形成した臭化タリウムによる変換膜は厚さ50μmで、抵抗率が1010Ωcm以上と高く、低い暗電流で動作することが分かった。また、ジャパンディスプレイ製のLTPS(Low Temperature Poly Silicon)型フラットパネルディテクター(FPD)上に臭化タリウム膜を形成し、FPDの微細ピクセル読み出し技術と組み合わせることで、250μmという高い空間解像度が得られた。
ニボシを用いたX線イメージセンサーの実証実験では、内部構造を高精度で可視化できることを確認している。
開発した手法は、広範囲に変換膜を形成できる。超大型イメージセンサーやフレキシブルセンサーなどへの応用が期待される。
従来のX線イメージセンサーの主流は、シンチレーターと光検出器を内蔵したFPD技術を用いる間接変換型だ。しかし、放射線の信号を直接電荷に変換する直接変換型の方が信号雑音比は高く、高解像度も期待できる。これまで検討されていたテルル化カドミウムやアモルファスセレンを利用した直接変換型X線イメージセンサーには、接合の必要性や信号生成に大きなエネルギーを要するなどの課題があった。
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