電池セパレータフィルムの「タルミ量」を測定する装置の一般販売を開始材料技術

カトーテックは、電池セパレータフィルムの「タルミ量」を測定するタルミ測定機を一般ユーザー向けに2024年6月から販売する。

» 2024年05月22日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 電子機器/部品メーカーのカトーテックは2024年5月21日、電池セパレータフィルムの「タルミ量」を測定するタルミ測定機を一般ユーザー向けに同年6月から販売すると発表した。同製品はこれまで取引実績のあるフィルムメーカーに向けて販売していた。

 タルミ量とは、セパレータフィルムが横方向にどのくらいのシワ(ひずみ)が起こっているのかを確認するための数値だ。各企業間ではそのようなシワを通称「たるみ」や「平坦度」と呼称している。フィルムに大きなたるみが起こると、シワを原因としてあらゆる問題(突起物の発生、電極のコーティングが不均一になるなど)を引き起こし電池の熱暴走につながると考えられている。そのため、セパレータフィルムのシワを確認することはフィルムの安全性を保つために重要だ。一般的には製造ラインでフィルムの平坦度を確認しているメーカーが多い。

タルミ測定機の機能

 カトーテックのタルミ測定機では、製造後(セパレータフィルム)の最終確認として、各メーカーで規定されたタルミ量を確認でき、品質管理が行える。フィルム製造時の成形条件を調整する1つの検討材料としてタルミ量も確かめられる。シワがどれくらい発生するのかを数字で確認することで、フィルム製造機の成形条件(厚み/強度など)を調整可能。既存製品のタルミ量を基準とし、新規開発品の成形条件の調整や出荷基準に達しているかなどの確認も行える。

タルミ測定機 タルミ測定機[クリックで拡大] 出所:カトーテック
タルミ測定機の利用イメージ、フィルムを通紙してセンサーハンドルを動かしてタルミを測定 タルミ測定機の利用イメージ、フィルムを通紙して(左)センサーハンドルを動かしてタルミを測定(右)[クリックで拡大] 出所:カトーテック

 同社では、リチウムイオン電池の市場拡大に伴い、セパレータフィルム市場に新興企業が続々と参入していることを踏まえて、セパレータフィルムを評価するタルミ測定機の他に、「セパレータフィルム突刺し強度試験機」も製造販売している。今後は、リチウムイオン電池の安全性や品質を評価する企業として、日本や韓国、中国、米国、欧州諸国のフィルム製造業界での実績を生かし、成長が期待されるスタートアップやベンチャー企業に向けて販売を拡大する。

タルミ測定機の開発背景

 同社は1990年代から、セパレータフィルムの製造機を製造販売し、約25年セパレータフィルムに携わっている。機器は全て取引メーカーに依頼を受けて、イチから設計したオーダーメイドだ。タルミ測定機もメーカーの依頼でフィルムの安全性を確認するため開発した製品で、各企業が設定したタルミ量も規定として作られている。

 リチウムイオン電池の安全性試験では、ISOやJISなどさまざまな規定が定められているが、より高い安全性や信頼性を担保するために、各メーカーが規格にない独自の安全性試験を実施し、厳しい基準を設けている。タルミ測定機も規格試験ではないが、事故を防ぐためのセパレータフィルム品質管理の1つとして利用されている。

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