産業メタバースで変わりゆく都市づくり、進むスマートシティ構築の未来(前編)デジタルツイン×産業メタバースの衝撃(5)(3/5 ページ)

» 2024年05月22日 07時00分 公開

標準フォーマットCity GMLと、PLATEAUの位置付け

 PLATEAUでは、現実空間に存在するデータのうち、都市空間データ(建物/道路/都市設備/土木構造物など)と、行政情報(都市計画/許認可/災害リスクなど)を対象に、City GMLと呼ばれるフォーマットで標準化を行っている。標準化によりさまざまなデータ連携を可能にすることで、外部プラットフォームで利用してもらい、高度なサービス創出を促進するのだ。

 連携する外部プラットフォームの例としては後述するシンメトリーディメンションズが挙げられる。現在では、設計データはBIM、空間情報はGIS、人流データはCSV、などデータ形式が不統一な状況で存在している。さらにデータとプラットフォームが個別に存在していため、横連携がしづらい状況であった。City GMLを使うことでさまざまなデータのフォーマットを統一すれば、利便性が向上する。

図4:都市におけるデータの階層構造と、PLATEAUの位置付け 図4:都市におけるデータの階層構造と、PLATEAUの位置付け[クリックして拡大] 出所:国土交通省

 国交省もこれらの変換ツールなどを開発、公開している。City GMLへのデータ変換ツールなどに加えて、「PLATEAU VIEW」というCity GMLのデータ可視化のためのプラットフォームも展開している。データを標準化するとともに、多くの外部プラットフォームやサービスを創出していくことが目的である。

 PLATEAU VIEWに搭載されている機能は簡素なものにとどまっており、あくまでショーケースとして位置付けられている。本命はCity GMLによる「データの標準化」だ。プラトーによりデータを標準化することで、プラットフォームやサービスレイヤーは民間企業による市場の創出を促す。

図5:ショーケースとしてのPLATEAU VIEW 図5:ショーケースとしてのPLATEAU VIEW[クリックして拡大] 出所:国土交通省

既存データをフル活用し効率的に3D都市モデルを生成

 PLATEAUは、従来、市役所などの行政機関が活用してきた既存の地図データを活用し、3D都市モデルとして新たな付加価値を生んでいる。市町村は「都市計画基本図」と呼ばれる2D地図を航空測量を基に制作している。実は、この2D地図データは、航空測量で撮られた写真データを3Dデータ化した上で作成していた。3Dデータは作成過程で生み出されていたものの、従来活用されていなかったのだ。

 この3Dデータに、意味情報として定期的に土地や建物の用途、建築年、階数などを収集している「都市計画基礎調査」のデータを重ね合わせたものがProject PLATEAUの都市3Dモデルだ。既存データ/資源を有効活用、発掘することで、安価で拡張性の高いデータ整備の手法を確立している。これにより全国の都市で、同じ手法で3Dモデルを制作することが可能だ。

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