日本の都市デジタルツインの特徴は、国交省がイニシアチブを取って進めていることだ。自治体が従来保有している地図/測量データを基に、「City GML」と呼ばれるフォーマットで3D都市モデルをオープンデータ化しているのだ。それぞれのデータがフラグメント化することを防ぐため、標準フォーマットのCity GMLで標準化することで、各自治体や企業などが新たなイノベーションを生む土台を作っている。
今後の動きとしては、日本国内の取り組みのみならず、新興国へのODA(政府開発援助)やインフラ輸出などにおいて日本の高精度な測量技術などを踏まえて当該国の3D都市モデルの整備を支援し、日本と他国都市のデジタル上での連携土台を構築する動きも有効と考えられる。そこで、City GMLを基に国土交通省(国交省)が推進している「Project PLATEAU(プロジェクトプラトー)」を下記に紹介する。
日本は国交省主導で2020年度から「3D都市モデルを活用したまちづくりのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進」を目的としたProject PLATEAUを展開している。3D都市モデルを用いて都市政策/都市開発の領域での課題解決や、新しい価値の創出を目指す。3D都市モデルの整備/オープンデータ化や、国交省による3D都市モデルのユースケース開発、自治体/企業による自律的な3D都市モデルの整備/活用ムーブメントの創出を通じて、下記の変化を起こそうとしているのだ。
データを活用して、経験則に頼っていた都市経営/開発を科学化する。3D都市モデルを用いて防災/環境/交通などの10〜20年以上先の姿をシミュレーションして、最適な都市計画を行う。
都市政策を3Dで可視化することで、専門家だけでなく誰もが分かりやすく、アイデアを出しやすい環境づくりを進める。それにより、住民参加型で合意形成を図りながら都市や政策作りを行う。
従来街づくりは20年単位で計画が行われていたが、変化の激しい環境に対応して社会課題の変化や、市民のニーズにそってアジャイルな都市開発を行う。
Project PLATEAUが整備した3Dモデルは全国約200都市以上で、急速に取り組みが進んでいる。COVID-19の及ぼした影響で進んだ側面もある。従来型のライフスタイルや価値観が大きく変わる中、都市マネジメント自体もデジタル技術を活用してこれまでの仕組みを変革する必要性に迫られている。歴史をたどると、阪神淡路大震災や東日本大震災などを経て、防災の観点から都市計画GIS(電子地図)の有用性に注目が集まった。その流れがCOVID-19で加速し、3Dモデルの整備が進んだのだ。
建物や道路などの形状データに、構造/用途など属性情報(意味データ)を付加する。それらとともに災害リスク、人流/交通データ、ゾーニング規制データ/行政情報などの都市レベルでのデータを重ね合わせてシミュレーション/分析するのだ。Google Mapなどと比較して、駅などの建物の用途や、壁/天井などの要素などの意味情報を有しており、人間が認識する都市空間の情報を限りなくデジタルツイン化していることが特徴だ。
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