古野電気(“FURUNO”と表記したほうがピンとくる人きっと多数)のブースでは無料体験できる「3D操船シミュレーター」コーナーを用意して、自社が販売している自動操船システムを訴求していた。
3D操船シミュレーターを構築していたのは、自動操舵装置「NAVpilot」シリーズのNAVpilot-300だ。このシステムには、船が風によって不意に流されることを防ぎ、船の航行方向を安定させる自動操舵機能を導入している。ユーザーはメニューから簡単に操船が可能で、ブースのデモ操船では風を受ける方向に船を向けることから操船を開始して、風の影響で船が流されながら向きが変わってしまう状態から、このシステムを利用して、適宜自動で後進を入れることによって船の向きを調整し、釣りをしていても釣り糸が絡まることを防ぐことが可能だという。
このようにNAVpilotシリーズでは、舶用センサーで得た情報を基に、操船者が特に意識することなく自動的に船を操船できる……が、本船向け自律運航技術とは異なる。システムは主に船の現在位置と船首の向きを把握するものの、潮や風の細かい変動をシステムが直接感知して修正するわけではない。そのため、ユーザーには波の強さや潮流などのパラメーターを調整することが求められる。
説明スタッフによると、それでも、風の吹く方向と潮流が異なる複雑な海況では、システムの自動操舵だけでは対応が困難となり、現時点では操船者が自ら工夫する必要がある場合もあるとしている。ただ、将来的には、機械学習を活用して、システムがさまざまな航行条件を学習し、自動で最適に操船できるようにする構想もある。そのとき、入力情報としては、レーダーや風向風速センサー、ソナーから得られる海底地形などの情報を使用し、より精密な操船の制御を目指している。とはいえ、これらの取り組みは現在研究レベルであり、実用レベルに到達するにはもう少し時間が必要との見方を説明スタッフは示している。
なお、小型船舶による横からの風圧や潮流によって流されたときに着岸できる自動操船については、桟橋の近くまで寄った後に横方向の移動を可能にするサイドスラスターを使用して自動着岸が可能だが、サイドスラスターを持たない小型船舶では現在の技術での実現は難しいという。特に舵を1基しか装備されていない場合では、着岸進入針路を一度外れてしまうと横移動で修正できなくなってしまうため技術的な難しさがあるとしている。
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