あたらめて、こうした工場でのカーボンフットプリントの1次情報を取得する意味としてはどのようなものがあるのだろうか。西村氏は「部品のCO2排出量精緻化」と「フリー電力の削減」の2点を挙げる。
「現在の2次データに頼った算定方式では、CO2排出量が工程設計に由来するものなのか、それ以外の要因にあるものなのかなど、要因が明確化できず、低減に向けた改善につなげることが難しい。実測値で算定することで、環境配慮設計の推進や、工程の省エネ施策の強化など、取り組みが直接的にカーボンフットプリント削減につなげられる。これらで削減した部分を、従来外部から購入していた再生可能エネルギーの削減などに充てられ、収益面での貢献にもつながる」と西村氏は価値について述べる。
さらに、西村氏は「実測データを取得することで副産物として工程改善なども進めることができる」と新たな価値についても期待を寄せる。例えば、先述した通り、実測結果から温度上昇時には電力が大きく上昇するが、保温時は電力が安定する傾向があることから、高い温度で溶ける材料から製造する工程に見直すことで電力を大きく削減することに成功したという。「電流を実測することで、今まで見えてこなかった視点から生産工程の見直しにも活用できた」と西村氏は語っている。
また、そのためには、IVIが推進する「CIOF」の活用が効果的だったという。「複数企業の製品を混合して受注するケースなどもあり、その中で工数の負荷なく関係ない企業の製造データを除外して連携する仕組みが必要になる。そのスキームとしてIVIが推進しているCIOFが適用できる」と語る。今後ブラザー工業では、2027年までに1次データの電力から部品ごとのCO2排出量を算定できる運用に切り替えていく計画だという。
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