クラウド向けのMI300XやMI300Aだけでなく、多くのユーザーが利用するノートPC上で高いAI処理性能を利用できるように開発したのが「Ryzen AI」だ。Ryzen AIは、CPUアーキテクチャの「ZEN」、GPUアーキテクチャの「RDNA」、そしてXilinxの技術を基に開発したNPUアーキテクチャの「XDNA」を統合して実現している。
Ryzen AIは既に現行のノートPC向けCPU製品に組み込まれているが、次世代のRyzen AI開発も進んでいる。2024年後半にマイクロソフトがリリースするWindows 11の新ビルドは、生成AIの活用を含めてより多くのAI機能が盛り込まれる予定で、次世代Ryzen AIはそれらをより高い性能で処理できるという。ペン氏によればその処理性能は「CPU、GPU、NPUの組み合わせで従来比3倍」とのことだ。
ペン氏は、今後さらなるAIの普及を進めていくには「AIの民主化」が必要になると指摘した。「高価なGPUを使わなくても、オープンソースベースでAIを活用できるようになるべきだ。AIは、日常をトランスフォーメーションしていくものであり、AMDのAI技術は自動車やヘルスケア、産業機器、そして宇宙探査などさまざまな業界において、クラウドからエッジ、そしてエンドポイントに至るまで貢献している」(同氏)。もちろん、この言葉の裏には、現在のAIシステムのハードウェアとソフトウェアの両方で圧倒的なシェアを握るNVIDIAという企業だけに依存すべきではないという意図が隠されている。
現在、AMDのプレジデントを務めるペン氏だが、同社に買収されたXilinxのCEOだった。AMDによるXilinxの買収は、大手CPUメーカーによるFPGAベンダーの買収という意味で、IntelによるAltera(アルテラ)の買収と比較されることが多い。そして2024年2月、IntelはFPGAの事業部門をAlteraという社名でスピンアウトさせる方針を示している。
ペン氏に、AMDでも同様に今後Xilinxをスピンアウトさせる可能性があるか聞いたところ「MI300X/MI300AやRyzen AIを見れば分かる通り、AMDの製品にXilinxの技術が既に組み込まれている。買収からわずか2年で両社のシナジーを生み出せている点で、IntelとAlteraの関係とは異なるのではないか。AMDとXilinxの統合は1+1が2ではなく3になっているわけで、スピンアウトする必要はないだろう」と述べている。
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