AMDは、SOM(System on Module)製品「Kria」の新たなラインアップとなる「Kria K24 SOM(Kria K24)」とその評価キット「KD240ドライブスターターキット」を発表した。
AMDは2023年9月19日(現地時間)、SOM(System on Module)製品「Kria」の新たなラインアップとなる「Kria K24 SOM(以下、Kria K24)」とその評価キット「KD240ドライブスターターキット」を発表した。2021年4月に発表した「Kria K26 SOM(以下、Kria K26)」と比べてサイズと消費電力を大幅に低減して価格も抑える一方で、コネクターの互換性を確保しており、Kria K26向けにこれまで開発してきたソフトウェアなどを再利用しやすくなっている。よりコストが重視されるモーター制御システムなどの産業用アプリケーション向けに展開する。価格はKria K24の民生グレードが250米ドル(約3万6900円)、産業グレードが350米ドル(約5万1700円)、KD240ドライブスターターキットが399米ドル(約5万8900円)。
Kria K24は、Kria K26と同様にプログラマブルSoC「Zynq UltraScale+ MPSoC」やメモリ、周辺部品などを小型ボードに集積したSOM製品である。ただし、Kria K24に搭載するZynq UltraScale+ MPSoCは従来のパッケージと比べてフットプリントや厚さを大幅に低減できるInFO(Integrated Fan-Out)パッケージ品となっている。クアッドコア構成の「Arm Cortex-A53」とデュアルコア構成の「Arm Cortex-R5F」など主要な機能は変わらないが、システムロジックセル数はKria K26の25万6000個から15万4000個に削減された。
Kria K24の外形寸法は60×42mmで、Kria K26の60×77mmよりも小型である。消費電力もKria K26の5.1Wから半減となる2.5Wに抑えられている。
周辺回路については、インタフェースのI/O数が132で、TSN(Time-Sensitive Networking)に対応するギガビットの産業用イーサネットを4チャネル、USBインタフェースを4チャネル備える。メモリも、ECC(誤り訂正符号)付きの32ビットLPDDR4を2Gビット搭載する。TSN対応やECC付きメモリなど、産業用を強く意識した構成となっている。
SOMの240ピンコネクターはKria K24とKria K26で互換性があり、Kria K26を用いて開発したソフトウェアなどをKria K24で再利用することが容易だ。ただし、Kria K26が240ピンコネクターを2つ備えているのに対して、Kria K24は240ピンコネクターと40ピンコネクターなので完全互換にはなっていない。
Kria K24の最大の特徴はDSPによるモーターの制御を高い応答性で行えることだ。一般的なDSPでは固定のMACユニット(積和演算器)を用いてシーケンシャルな制御を行うことになるが、Kria K24はFPGAファブリックを用いて複数のMACユニットを用意することで並列処理が可能になる。例えば、単軸ドライブ制御の遅延時間で比較すると、TIのDSPプロセッサ「AM64XX」の276nsに対して、Kria K24は2分の1以下となる120nsに低減できている。
また、Kria K24は誘導モーター、永久磁石モーター、リラクタンスモーター、サーボモーターなどさまざまなモーターの制御に対応している。
評価キットのKD240ドライブスターターキットは、最新バージョンのUbuntuに基づくソフトウェア開発環境が用意されており、PythonやMATLABなどで開発を進めることができる。FPGAやプログラマブルSoCなどを用いた開発では、HDL(ハードウェア記述言語)などの知識が求められることが課題だったが、Kriaとその評価キットではFPGAの設計経験がなくても開発に取り組めることが重視されている。
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