AMDは、SOM製品「Kria」の新たなラインアップとして、オープンソースのロボット開発フレームワーク「ROS 2」をネイティブでサポートする「Kria KR260ロボティクス・スターターキット」を発表。NVIDIAの競合ソリューションと比較して、ソフトウェア開発期間が約5分の1、消費電力1W当たりの性能が8倍以上、レイテンシが3分の1以下になるという。
AMDは2022年5月18日、SOM(System on Module)製品「Kria」の新たなラインアップとして、オープンソースのロボット開発フレームワーク「ROS 2」をネイティブでサポートする「Kria KR260ロボティクス・スターターキット(以下、KR260)」を発表した。競合ソリューションとなるNVIDIAの組み込みGPUボード「Jetson」とROS 2との連携が可能なロボット開発プラットフォーム「Isaac」の組み合わせと比較した場合、ソフトウェア開発にかかる期間が約5分の1、消費電力1W当たりの性能が8倍以上となり、リアルタイム処理性能を示すレイテンシ(遅延時間)を3分の1以下にできるという。価格は349米ドル(約4万5000円)で、既に購入可能な状態にある。
Kriaは、AMDが2022年2月に買収したザイリンクス(Xilinx)が展開してきたプログラマブルSoC「Zynq UltraScale+ MPSoC」を搭載するSOM製品のブランド名で、2021年4月にAIカメラ向け開発キットである「KV260」と量産向けのSOM「K26」を発表している。今回発表したKR260は、中核のSOMはK26のまま変更することなく、先進的なロボットの開発に必要なインタフェースをキャリアカードに搭載するとともに、ROS 2をネイティブでサポートするのに必要なソフトウェアスタックやアプリケーションを追加している点が異なる。
KR260の追加要素は大まかに分けて3つある。1つ目は、近年ロボット開発のフレームワークとして採用が急激に拡大しているROS 2のネイティブサポートである。ROS 2の最新版であるHumble Hawksbillを用いたロボット開発を容易に行えるソフトウェアスタックがあらかじめ用意されている。プログラマブルSoCやFPGAを搭載するシステムのソフトウェア開発は、HDL(ハードウェア記述言語)が必要なためハードルが高いイメージがあるが、KR260では開発環境の「Vitis」をベースにC++やPythonなどのプログラミング言語だけでロボットのシステム開発が可能な環境を整えたとする。
競合ソリューションとするNVIDIAのJetsonとIsaacの組み合わせと比較した場合でも、ツールチェーンのセットアップからROS 2における制御処理の実装、コードのコンパイルまでにかかる時間は4.7分の1で済むという。
また、NVIDIAソリューションとの性能比較は、エントリー向けの「Jetson Nano」とハイエンドの「Jetson AGX Xavier」の両方で行っている。消費電力1W当たりの性能では、Jetson Nanoと比べて8.3倍、Jetson AGX Xavierと比べても6.25倍を実現している。リアルタイム処理性能を示すレイテンシ(遅延時間)についても、Jetson Nanoと比べて3.5分の1、Jetson AGX Xavierと比べても2分の1弱になっているとする。
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