meviyもいつどんな注文が入るかは事前に分からず、1品ごとに異なる工程、段取り、工具などが必要になるが、電子差し立てシステムによって工程に投入する順序決めを自動化し、加工支援システムが加工する面の順番やワークの姿勢、工具などを指示する。
ただ、ミスミの商品展開は800亥通りに上るバリエーションがあるが、それぞれが特注品のmeviyでは組み合わせは無限大になる。
駿河生産プラットフォーム meviyバックエンドセンター長 黒田悟氏は「当初は標準品と同じようにデータベースを作ろうとしたが、パターンに当てはまらないケースが頻出し、組み合わせ爆発が起こった。有限であればデータベースを作れば解決できたが、特注品となってそのたがが外れてしまった。そこで今は巡回経路探索の考え方を用い、その場で計算して解を得ている。例えると、加工に必要な全ての工程をいったん分解し、それを考えられる限りの順番に並べ替え、どの経路で行くのが一番近道化を計算していることになる」と語る。
現状はまだ第1期の開発の位置付けになっており、今後、第2期、第3期の開発を計画しているという。遠矢氏は「デジタルマニュファクチャリングシステムは手段であり、どれだけコスト優位を作り、時間対応力を高められるかが目的だ」と語る。
「製品開発力」「生産システムの進化論」「生産マネジメント入門」などの著書を持つ早稲田大学 ビジネス・ファイナンス研究センター研究院 教授の藤本隆宏氏もmeviy Factory Dayに参加し、「ミスミは(1977年のプレス金型用標準部品カタログ創刊から)50年かけてアーキテクチャ革新に取り組んでいる。meviyもその一環だ。他の企業は簡単にはついてこれない」と評する。
藤本氏は「日本の製造業は30年ぶりに生産性底上げが必須の時代に入った」と語る。20倍近くあった中国との賃金差が縮まり、「もう“逆立ちしても勝てない”という状態ではない。生産性を高めれば国内でも作れる。30年かかったトンネルの出口にいる」と話す。
さらに藤本氏はmeviyに関して、カタログ標準化、型番による受注製作品に続く、ミスミの第3幕の物語であると表現し、「日本の製造業が現在も設計の比較優位を持ち続けるインテグラル型アーキテクチャ(擦り合わせ型設計思想)で、なおかつ多品種変量生産製品に多用されるカスタム設計(製品特殊設計)部品の設計、製作に対して、3次元デジタル設計と自動化技術を駆使することにより、生産性、生産リードタイム、設計品質などに関する顧客企業の現場の“裏の競争力”を大幅に向上させ得るシステムだ。ぜひミスミの第4幕も見たい」と期待した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.