時間を創出し価値を最大化するミスミのデジタルマニュファクチャリング(後編)スマート工場最前線(2/3 ページ)

» 2024年03月13日 12時30分 公開
[長沢正博MONOist]

独自のシステムや装置でリードタイムを短縮した清水工場の中身

 今回公開した清水工場の金型部品製造工程では、オリジナルのシステムや装置を活用してリードタイムの短縮に成功している。

駿河生産プラットフォームの外観[クリックで拡大]出所:ミスミ

 自社開発した電子差し立てシステムは、受注情報や設備の稼働状況などをリアルタイムに反映しており、納期や表面処理、追加工の有無などによって受注リストから投入する順番を自動で決定している。これによって従来人が行っていた製造指示書の印刷や振り分けなどの作業を自動化した。

 自社開発の粗(ALA)、仕上げ(SHI)同時加工機「ALASHI」とツバ(TSUBA)加工専用機「TSUBAKI」の導入によって粗加工から仕上げ、追加工までの工程を集約した。これらの導入前までは7種類16台の設備を使い、1シフト7人、1ロット当たりのリードタイムが21時間かかっていた工程が、現在は2種類9台の設備で1シフト1人、1ロット当たりのリードタイムは2時間と大きく短縮した。

自社開発の「ALASHI」が並ぶ通称“ALASHIスタジアム”[クリックで拡大]出所:ミスミ

 加工後の寸法測定に関しても、検査支援システムを自社開発。作業者が加工後のワークを測定すると測定データが検査支援システムに送られ、そこで顧客の指定寸法と照らし合わせ、自動で合否判定できるようになっている。

 検査を終えて問題のなかったワークは、やはり自社開発の搬送装置「ミニ8駆」に載って表面処理や梱包の工程へと運ばれる。

 ブランクと呼ばれる加工前のワークを搬出する作業も自動出庫装置「BLABO」によって自動化している。ブランクは約350種類あるが、BLABOでは受注に合わせて最適なサイズのブランクを選び、専用パレットに付いているRFIDに受注情報を書き込み、出庫する。

 ブランクの補充自体は人が行うが、ブランクが入ったパレットを乗せた台車をBLABOに入れておくと、BLABOが作業していない時間に自動で補充する。その際には、カメラでブランクのサイズや数などを検知し、どの棚にどのサイズのブランクが何本入っているかも認識している。これらによって最終的にリードタイムは30分の1まで縮んだという。今後、加工する際のワークの脱着や梱包作業の自動化も計画している。

 meviyを支えるデジタルマニュファクチャリングにも同じコンセプトを展開している。ウォータジェット加工で板材からブランクを作り、マシニングセンタで粗加工や仕上げ加工を行う。マシニングセンタへのブランクの投入は人が行うが、マシニングセンタ間のワークの移動はロボットで行っている。デジタルマニュファクチャリングシステムは清水工場の他、関西工場、ベトナム工場で行われおり、清水工場はショーケースの位置付けに当たる。

ウォータジェット加工で鉄やアルミから材料を切り出す[クリックで拡大]出所:ミスミ
移動可能なロボットがワークをマシニングセンタに投入する[クリックで拡大]出所:ミスミ

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